【レビュー】プラチナ 超微粒子 水性顔料インク ブルー を使ってみました [万年筆]
プラチナ製顔料インク「顔料ブルー」のインクフローをチェック。色落ちがなく、落ち着いた色で飽きが来ないブルーインクだと思います。
◎プラチナ 超微粒子 水性顔料インク ブルー (Platinum Pigment Blue)
2009年4月中旬に発売されたばかりのブルーインク。このインクの特長は、現在の万年筆で一般的に使われている染料インクではなく、耐久性の高い「顔料インク」を使用している点。
通常のインクには「染料インク」が使われています。染料インクの欠点として、時間が経つと色が薄くなるということが挙げられます。
実際にどれぐらい変化するのか、自分が過去に使っていたノートを押入れから探し出してきて調べてみました。
上の写真は、パイロットのブルー・ブラックでコクヨのノート(中性紙)の右上に万年筆で書いた日付の筆跡。「970102 1605」は 1997年1月2日16:05 を意味するので、約12年半前に書いたもの。 比較として、同じインクで色付けした紙を下半分に置いています。
写真を見ると、たしかに色が薄くなって色の彩度が落ちているのがわかります。
このノートは積み重ねて置いてあったので、直射日光にはほとんど触れていないのですが、それでもこの程度の劣化が起こるようです。
「顔料インク」は長期保存時にこのような変化が起こらないよう、耐久性の高い顔料を使用しています。
プラチナの顔料インク・ブルーの特長は以下の通り。
◎ 耐水性が高い(乾燥後に濡れてもにじみにくい)
◎ 耐光性が高い(長期保存後の色劣化がない)
◎ 字が鮮明
◎ 速乾性がある
個人的には、これに加えて「ペン先の滑りが若干なめらかになる」という効果もあると感じています。万年筆で字を書くことが楽しくなるインクといえますね。
これまで発売されていた顔料インクは、顔料にカーボンブラックを使用した黒色のものしかありませんでした。(セーラー万年筆「極黒」、プラチナ萬年筆「カーボンインク」など)
黒色はわたしの好みではないので、これまでは顔料インクを使おうという気は起こらなかったのですが、このたびプラチナから青色の顔料インクが発売されたので、さっそく試してみたところ、なかなか好感触。
メインの万年筆であるプラチナ#3776に入れて毎日使っています。
色調は落ち着いていて地味な青。
日本画に通じるものがあり、日本製のプラチナのインクにはこういうトーンが似合います。
インクの比較 プラチナ顔料ブルー ナノインク 超微粒子 アウロラ ブルー エルバン ビオレパンセ ヴィオレパンセ ラミー ブルー インク粘度 酸性度 ヌラヌラ
手持ちの青系インクの色見本
顔料インクは乾燥すると簡単に固まった除去できずペン先で詰まってしまうため、他社の一般的な万年筆インクとは異なり、箱の裏側には詳細な注意書きがあります。
他のインクと違って気軽に使うわけにはいかない・・・という雰囲気をかもしだしています。染料系インクにはない、もうひとつの特徴でしょう。
実際に使っていて、インク切れのためペン先が乾いた状態のまま数日間放置してしまったことがあります。
「まずい、ペン先が固まったか・・・?」と冷や汗をかいたのですが、インクを何回か入れたり出したりしてから使ってみたところ、以前と同じ感触で特にインクフローが悪くなることはありませんでした。
念のため、インクを補充する際は3回ほどインクを出し入れして、インクの通り道をインクで共洗い(ともあらい)しています。
毎日ノートの筆記用にこのインクを使っています。落ち着いたブルーで、使えば使うほど味わいが感じられる色・・・という印象。保存後に色が変わらないというのも魅力ですね!
(2012年6月 追記)
使い始めて3年近く経ちました。今では他のインクに浮気することがなくなり、このインクのみ使っています。購入したインクボトルは3本目に。
キャップさえしていれば、一週間以上放置しても固まることはありません。常用の万年筆につかうのであれば、あまり神経質にならなくても大丈夫だと思います。
◆ 箱の裏書き ◆
特 長
●プラチナの顔料ブルーは、超微粒子なので筆記がスムーズです。
●顔料ブルーインクは、超微粒子顔料インクを使用していますので、耐水性、耐光性に優れ鮮明です。筆記の永久保存などに最適のインクです。但し、水溶性ではない為、一度乾燥すると再び溶けないので、万年筆に使用する際は、メンテナンス等の注意が必要です。
使用方法
●超微粒子顔料ブルーインクは、万年筆・ペンなどの筆記用インクです。筆記以外の使用はご遠慮ください。
●インクを変更する場合は、化学変化が生じますのでペン先(ニブ)・カバー・ペン芯内部を水洗いしてください。
●ご使用後は、ビンのキャップをしっかり閉めてください。
万年筆のメンテナンス
●インクは、水分が蒸発して固まりますので使用時以外は、キャップを閉めてください。
●少しでも書き味が悪くなった場合は、ペン先を水に浸けてから柔らかい布なので拭いてください。
●暫く使用しなかった万年筆やインクの出が悪い時及び一ヶ月に一度位は、ペン先をぬるま湯に入れ1日か2日浸してください。その後、水道の水で、インクの色がなくなり、きれいな水だけが流れてくるまで洗い流し、最後に乾いた布などでやさしく包むように拭いて水気を取り除いてください。
●キャップを取って放置しないでください。一度インクが詰まると乾燥し完全分解掃除が必要です。
2016年4月17日 追記
久しぶりにインクを買い足したところ、インク瓶吸入補助具(リサーバー)が追加されていました。
これまでは、インクが少なくなると斜めにペンをズボッと押し込んでいましたが、このリサーバーがあれば、インク量が少なくなってもペンを真ん中に立てた状態で吸引できます。
通常の状態でもインクを入れやすくなりました
中央に入っているプラの部品がリサーバー
■インクビン吸入補助具(リザーバー)使用方法◆インク残量約5CCまでリザーバーの使用が可能です
リザーバーを使ったインクの入れ方
1.インク瓶キャップがしっかり閉まっていることを確認します。2.キャップをしっかり締めたことを確認したあと、インク瓶をゆっくり逆さまにしたあと、戻してください。3.インク瓶を元に戻すと、リサーバーにインクがたまります。4.インク瓶キャップを外し、液面を確認後、ペン先がリサーバーの中に止まるまで入れてインク吸引を行ってください。
【製品仕様】
超微粒子 水性顔料インク ブルーインク
品番 INKG-1500 #60ブルー
価格 1,575円(税込み)
製品仕様 ビン入り
容量 60cc
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愛用のインクたち [万年筆]
万年筆の楽しみのひとつは、自由にインクを選べること。
万年筆を使い始めた当初、パイロットの「ブルーブラック」をひたすら使っていました。
このインクを使っていた理由は、
① 街の文具屋に在庫がある。
② 自分が敬愛している作家である開高健が愛用していた。
からです。
今はインターネットによって様々なインクに関する情報が手に入りますし、通販で好きなインクを手軽に入手することができます。基本的にブルー系のインクが好みなので、他のメーカーのインクをいろいろと試してみた結果、今はプラチナの超微粒子ブルーインク(顔料インク)をメインに使うようになりました。
これまで使ってきた青系インクをここで紹介します。
◎パイロット ブルー (Pilot Blue)
万年筆の使用開始当初から一貫して入れていたパイロットのブルーブラックに変えて新しく試してみた最初のインク。これを選んだ理由は、街の文具屋に在庫があったから。渋い色調のブルーブラックと違って澄んだ青色がとても華やかに感じられたことが印象に残っています。ブルーは自分の好みの色であり、かつ各社から発売されているので、これ以降ブルーのインクをあれこれ試すようになりました。
◎アウロラ ブルー (Aurora Blue Ink)
ブルー系のインクは、渋い色調のもの、淡い色調のもの、鮮やかなもの、紫がかっているものなど、各社のインクで微妙な違いがあります。アウロラのブルーは、スタンダードなブルーの中でわずかに紫が主張している色、といったところでしょうか。この微妙に紫色がかっている点が気に入って、今も使用頻度の高いインクになっています。ラミーのアルスター(ブルー)に入れて使うのがお気に入り。
アウロラ・ブルーのインク瓶
◎エルバン ヴィオレ・パンセ (J.Herbin Violette Pensee)
アウロラ・ブルーで紫風味の青色が好みであることが分かったので、さらに紫を強調した青色はないか・・・と探していてたどり着いたのがエルバンの「ヴィオレ・パンセ」。フランスの老舗インクメーカーであるエルバンのトラディショナル・シリーズのなかでトップを飾るインクでもあります。
通販で購入し、初めて万年筆に入れてスッと線を引いたときに、「これは紫味が強すぎる・・・失敗したか?」と後悔したほどの強烈な 紫 でした。不思議なことに、インクが乾いてくると落ち着いた色調に変わります。
第一印象はあまり良くありませんでしたが、だまされたと思って使い続けているうちにヴィオレパンセがかもし出す 赤紫色の魔力 にはまってしまい、使用頻度の高いインクになりました。「中毒になる色」と言えるでしょう。(笑) ここ2年間で一番使ったインクです。インクフローに癖はなく、素直にインクが出てきます。
しばらく使っていないとペン先のインクが滞留している部分に薄い紫の皮膜ができます。最初はゴミがついたのかと思っていたのですが、どうやらインクが皮膜に変化しているようです。
最近は次に紹介するプラチナの顔料ブルーに使用頻度トップの座を明け渡しましたが、ブルーばかり使っていると飽きてくるので、気分転換したいときにヴィオレ・パンセを入れたラミーのアルスター(グラファイト)を手にとってサラサラッとメモを書くと、気持ちがすっきりします。
ヴィオレ・パンセのボトル
◎プラチナ 超微粒子 水性顔料インク ブルー (Platinum Pigment Blue)
2009年4月中旬に発売されたばかりのブルーインク。このインクの特長は、現在の万年筆で一般的に使われている染料インクではなく、耐久性の高い「顔料インク」を使用している点。
2009年の夏になってこのインクが発売されていることを知り、通販で購入してみました。
色調は落ち着いていて地味な青。日本画を連想させる色調です。
今はメインの万年筆であるプラチナ#3776に入れて使っています。顔料インクは乾燥すると簡単に除去できずペン先で詰まってしまうため、箱の裏側には詳細な注意書きがあり、他のインクと違って気軽に使うわけにはいかない・・・という雰囲気をかもしだしています。
プラチナ 顔料ブルーの箱と瓶
箱裏の注意書き
上記3つのインクの使用状況。ヴィオレ・パンセはインクが少なくなって補充の際に瓶を傾けなくてはならなくなってきたので、そろそろ新しい瓶を買いたいところ。
手持ちの青系インクの色見本
【 プラチナ #3776 ⑤】 向田邦子が愛用した#3776 [万年筆]
プラチナ#3776を使っていてひとつ残念に思っていること。それは著名な作家の愛用者が少ないことです。作家に人気のある万年筆のトップはモンブランではないでしょうか。
Wikipediaの梅田晴夫のページには、#3776の愛用者として向田邦子の名前が挙げられています。わたしは彼女のエッセイのファンですので、事実かどうか調べてみることにしました。
中学生か高校生の頃、実家の本棚に向田邦子のエッセイがあり、万年筆について書いた作品があったことをぼんやり覚えていました。たしか、愛用の万年筆に「本妻、2号、3号」と名づけていたという内容で、顔のある万年筆のかわいらしい挿絵が入っていたはず。
ネットで調べたところ、どうやら「無名仮名人名簿」という本にありそう。さっそく図書館で借りてきて調べてみました。
ページをパラパラめくっていくと・・・あ、ありました!万年筆のイラストが。挿絵の作者は村上豊でした。
探していた作品は「縦の会」という題名。「本妻、2号、3号」はこう定義されています。
私は万年筆を三本持っている。三本の中で一番書き馴れたのを本妻と呼び、次に書き易いのを二号、三番手を三号と呼んでいた。(「縦の会」より)
万年筆のヘビー・ユーザーは、万年筆のインクの出やすさやペン先の滑りにこだわる人が多いのですが、向田邦子も同じだったようです。
テレビのセリフは、ホーム・ドラマを多く書くせいであろうが、或る程度早く書かないとテンポが出ない。それでなくとも性急(せっかち)なので、万年筆は滑りがよく書き馴れたものでないと、セリフまでいつもの調子が出ないようで焦々(いらいら)する。(「縦の会」より)
・・・うん、うん、その気持ち、よく分かります。
驚いたことに、向田邦子は他人の万年筆を掠奪するのを得意としていたようで、本妻と2号は他人のものを奪い取ったとのこと。狙っている万年筆はよりによって使いやすいコンディションのものに限定していたというから、恐ろしい・・・。
大きな、やわらかい文字を書く人で、使い込んで使い込んでもうそろそろ捨てようかというほど太くなったのを持っておいでの方を見つけると、恫喝(どうかつ)、泣き落とし、ありとあらゆる手段を使って、せしめてしまう。使わないのは色仕掛けだけである。(「縦の会」より)
誰から万年筆を奪い取ったのか、については以下の通り。
第一号:映画評論家の清水俊二氏
本妻:不明。他人からの掠奪品。
2号:某婦人雑誌編集部の敏腕女史。
3号:パリで購入。(これは例外)
その他:某テレビ局のディレクター。
残念ながら、どのメーカーの万年筆を愛用しているのかは分かりませんでした。
次に、向田邦子に関するHPを調べてみると、彼女が出身の実践女子大に寄贈された遺品のページ中に万年筆がありました。
これはウォーターマンの万年筆で、「向田保雄氏が使用していたものを、先が丸く(柔らかく)なって使いやすくなったのをみはからって、保雄氏にねだったもの。」とコメントがついています。
なかなかプラチナ#3776にはたどり着けません。。。
視点を変えて、向田邦子の本を書いている久世光彦について調べてみると、彼女との思い出を綴った「触れもせで」の中に遺品の写真が出ていることが分かりました。
さっそく入手してページをペラペラとめくってみると・・・
あ、ありました。万年筆の写真です。
遺品の万年筆の写真
モノクロで見にくいのですが、どうやら右から3本目はプラチナ#3776のギャザードのようです。写真に写っている10本の万年筆のうち、パーカーの万年筆が6本も入っています。
この本の「おしゃれ泥棒」という作品で、久世光彦は向田邦子に10本以上のパーカーの万年筆を取られた話を披露しています。
遺品の万年筆の写真の中にパーカーの万年筆が何本も入っていたのは、このためだったんですね・・・。
【2009年10月17日 追記】
「向田邦子 ふたたび」にも万年筆の写真が掲載されていました。
黒のプラチナ#3776ギャザードですね。
【 プラチナ #3776 ④】 梅田晴夫と『The 万年筆』について [万年筆]
Wikipedeiaの梅田晴夫の項にある「プラチナ#3776」の開発にまつわるコメントの中には、開発に協力した作家として開高健の名前が挙げられています。
開高自身はモンブランの愛好家であり、自分が愛用していたモンブランについて綴った「この一本の夜々、モンブラン」という作品があります。
おもしろいことに、この中で梅田晴夫が開高健に#3776の開発にあたってアンケートをおくってきたことを書いているくだりがあります。
「・・・のちに“ザ・万年筆”と命名して売り出されることになる万年筆の開発に着手し、アンケート用紙を送っておいでになったことがあった。」
とあるので、プラチナ#3776のために梅田氏が開高氏へアンケート用紙を送ったことを指しているのでしょう。
梅田氏には、この万年筆と同じ名前の「The 万年筆」という万年筆に関する話を集めた著作があります。本の出版は1974年6月ですので、#3776発売の4年半前になります。
この「The万年筆」は氏のコレクションの紹介のみならず、日本や世界の万年筆にまつわる話、万年筆の手入れなど様々な小話が載っており、万年筆愛好家であれば手元に置いておきたい一冊です。(現在は絶版なのが残念。)地元の図書館に蔵書があったので、借りてみました。
梅田氏は愛用の一本として並木製作所(パイロットの前身)が製作した「ダンヒル・並木」の万年筆を絶賛し、毎日使っていると書いています。他の記載を見ても、どちらかというとパイロットの関係者との付き合いが多い印象を受けるのですが、なぜ「究極の万年筆」を開発するに当たって、パイロットではなくプラチナとの開発を選択することになったのか、興味深いところです。
なお、同書では「プラチナ」の社史から引用したプラチナの沿革が簡単に紹介されています。ざっと引用してみました。
・大正八年(1919) 中田俊一氏が中屋製作所を創立。 『生涯ひたすら優秀な万年筆の完成に心血を注ぎ、また一方では優秀な技術者の育成、社員一同の和を計り、協力を得て、経営、販売、製作部門を総合し、近代工場に発展させました。』と中田氏について触れている。
・戦後、「プラチナ産業株式会社」となり、さらに昭和38年6月、現在の「プラチナ萬年筆株式会社」と社名変更。
・会社の姿勢:『常に業界をリードし、社会に公益をもたらす万年筆を作り、信頼にお応えすべく不断の努力で前進するのが創立者の道を継ぐものの使命』
『生物としての静物』
「この一本の夜々、モンブラン」が収録されている本。
万年筆の愛好家であればぜひ一読をおすすめしたい名文です。
【追記】
わたしは開高健の作品が好きで、氏が愛用するモンブランをいつか自分も使ってみたい、とあこがれたことがありました。(Montblank 149)
氏の愛用していたモデルはモンブラン149の中字。インクはパイロットのブルーブラック。
知り合いが持っているモンブラン149で字を書かせてもらったことがありますが、自分の手の大きさに対して軸が太すぎる感触でした。
(「太陽 特集・開高健」(1996年)より)
【 プラチナ #3776 ③】 梅田晴夫による「#3776」の開発 [万年筆]
中屋万年筆のホームページにある「プラチナ#3776」の紹介ページには、この万年筆を設計した梅田晴夫氏が紹介されています。
「#3776」の由来は、富士山の標高にちなんでいることが分かりました。設計者の気概が伝わってきます!以下、中屋万年筆のページからの引用です。
プラチナ #3776(サン・ナナ・ナナ・ロク) は、『ミスター万年筆』と称された作家、故梅田晴夫氏と研究グループにより設計された理想の萬年筆です。名称は、富士山の標高を表わす数字にちなんでつけられました。まさに、美しい日本文字のための、日本を代表する万年筆の品質を語る名称です。
この万年筆は次の4つの設計思想に基づいて作られたとあります。
『理想の万年筆』とは、
設計思想1:軸は太くなければならない
設計思想2:ペン先は大きくなければならない
設計思想3:愛蔵に耐えなければならない
設計思想4:手にフィットしなければならない
ウィキペディア(Wikipedia)の梅田晴夫の項にも、#3776の紹介がありました。
ウィキペディアからの引用です。
梅田が1970年代にプラチナ萬年筆株式会社と共同開発した手作り万年筆。梅田の約1000本のコレクションから、特に優れた12本の万年筆の長所を合わせて設計され、開高健など、一日30枚以上の原稿を執筆するヘビーライターとして知られた50名の作家の協力を得て、試作、試用を積み重ねて1978年12月に完成した。この万年筆はモンブランに対抗して、富士山の標高に因み、「プラチナ#3776」と命名された。軸の直径は13mm。キャップを外して軸にはめた全長は約160mm。ペン先の長さ22mm。重心点は軸の中心からやや後方の56~57%の位置。ペン先は14金、ペン芯にはエボナイトが使われ、カートリッジ・インク対応。ペン軸にはウォーターマン社のハンドレッド・イヤー・ペンをモデルにしたギャザー(襞)が入れられ、長時間使用しても熱がこもらない仕組みになっていた。プラチナ#3776はすべて手作りのため製造コストが嵩み、1990年代以降はしばらく製造中止となったが、2005年(平成17年)に生産を再開。現在はペン軸にパイプの素材としても知られるブライヤ材を使用したものや、蒔絵を施した高級品も製造販売されている。
・ ・ ・
なるほど、だんだんペン開発の詳細が分かってきました。
綿密な調査とペンに対する熱意の結晶がこの「#3776」となったんですね。コンセプトがしっかりした設計だからこそ、発売から30年以上経った今も生産が続けられているのでしょう。
#3776のペン先。「14K」は14金の意味です。
(2009/9/4記)
【 プラチナ #3776 ②】 キズだらけの万年筆 Plutinum #3776 スタンダード [万年筆]
プラチナ #3776 ペン先 ニブ 硬め 固い インクフロー キレ たれない 渋め
ネットショップで「プラチナ#3776」を検索すると、一万円を切るモデルから高価な蒔絵モデルまで、多種多様のタイプがあります。ユーザーのブログを探してみると、屋久杉やセルロイド軸の#3776のきれいな写真があったりして、ついつい時間を忘れて読みふけってしました。。。
わたしも自慢の一本を紹介したいところですが、そんなに高いモデルではありませんので、ちょっと気が引けます。
むしろ、キャップのメッキははがれて下地がむき出し、蒔絵風のプリントはほぼ消失・・・で、見るに耐えない状況。
こういう「くたびれた一本」の紹介はネットにありませんでいたので、あえて「万年筆のキズ」に焦点を当てながら、愛用の万年筆を紹介したいと思います。
「プラチナ#3776」の万年筆は、手元に2本。
左上にあるスタンダードのタイプが25年使っているもの。右下のギャザードタイプは、妻のお母さんが持っていた古い一本で、使わなくなったセーラーの万年筆と物々交換で入手したもの。こちらはまだあまり使い込んでいません。
ペン先は、左上のものが「中字」、右下のギャザードが「太字」。中字の方が硬めのペン先で好み。太字はまだ慣れていないところがあり、かつやや柔らかめのペン先なので、書いていてちょっと落ち着かない感触があります。
書き味については、非常に微妙な差なのですが、こういうところが結局のところ愛着の差につながるんですよね・・・。
ペン先の比較。左が「太字」、右が「中字」。太字の方が大きなペン先で、インクフローの量も多い傾向があります。ペン軸は左が古いタイプ、右が新しいタイプです。もともとは両方とも古いタイプの軸だったのですが、右のペンは中屋万年筆で調整した際に新しい軸に交換されて戻ってきました。
ペン先の拡大。「中字」は使い込んでいるうえ、以前にラッピングペーパー(ヤスリ)で書き味を調整したために、ペン先が紙に触れる面積が大きくなってしまいました。そのため、「中字」なのに字の太さは「太字」とあまり変わりません。
上のペン先で書いた文字。インクの影響もありますが、「太字」の方はインクフローが良すぎるので、濃い字になり、「中字」で書いた方はやや薄い色合いになります。
インクについては、上の太字は「アウロラ ブルー」、下の中字は「プラチナ 顔料ブルー」。
ペン先の表側。左側の方はまだあまり使っていないのできれいな光沢。右上の方は長年使っているなかで何度もインクをふき取った結果、金の光沢がにぶくなってちょっとつや消し気味。
スタンダード(バランス?)モデルとギャザードの比較。ギャザードの方が長くなっています。スタンダードの場合、キャップをつけてちょうどいい感じ。ギャザードはキャップを外した状態で書いています。
いちばん痛々しいのは、キャップのリング。筆記中、親指の根元にここが触れるため、ちょうど肌に当たるところのメッキが剥がれています。最外部は金メッキですが、その下は銀色の地があり、さらにその下は黄色のつや消し材になっています。
ギャザードの軸。こちらはまだあまり使っていないので、メッキは少し剥がれ始めた程度。
ギャザードの軸をデジカメのマクロ撮影の最大能力で撮影してみたところ、円周方向に筋が入っていました。昔は一本一本、轆轤(ろくろ)を回して削りだしていたとネットの記事に書いてありましたので、その名残でしょう。
スタンダードのペンが「蒔絵」風モデルだった名残り。そんなに高くないので、おそらく蒔絵を模したプリントだったのではないでしょうか? ここ以外の部分はすべて剥がれ落ちてしまったので、パッと見たところでは無地モデルにしか見えません。
何度も落とした衝撃でキャップの先端が割れ、穴が中まで貫通してしまいました。インク乾燥防止のため、手近にあった白いシーラントで埋めています。決してモンブランの真似をしているわけではありません。
見ての通り、ボディはボロボロですが、ペン先の方はちっとも故障せず、快調そのもの。サインペンのようにスィスィとインクが流れます。今回のブログ作りにおいて、下書きのメモ作りに大活躍してくれました。
(2009/8/30 記)
(追記 2011/9/4)
プラチナの#3776にインクの乾燥を防ぐ「スリップシール機構」を新たに組み込んだ「センチュリー」が新たに発売されました。定価は控えめな10500円。
スケルトン仕様の「本栖」も2011年7月から先行発売されています。
プラチナファンとして、気になるモデルですね~
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・プラチナ センチュリー Century
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硬め かため
【 プラチナ #3776 ①】 この一本を使い続けて25年... [万年筆]
中学生の頃からプラチナの万年筆を使い続けて25年になります。
ペンの名は『プラチナ #3776』。
今も仕事やプライベートのメモ書きに使っています。毎日平均1時間ぐらいは仕事のアイデア出しやノート作成など、何かしら書いているほどのヘビーユーザーですので、「こんなに酷使してもよくぞここまで耐えられるなぁ」とつくづく感心してしまいます。
この万年筆はペン先の書き味が自分の書き癖にマッチして、ストレスなくスーッと線が引けます。 自分はペンを寝せて、力をいれずに軽く紙の上を滑らせるような書き方なのですが、ペンを動かせばインクが「スッ」と出て、ペンを止めるとキレがよくインクが止まります。
5年ほど前にインクがかすれるようになり、非常にストレスを感じるようになりました。
そこで、自分のペンの書き癖を説明し、さらにインクフローの希望(インクがスッと出て、ペン先を止めるとインクがキレよく止まること、インクがヌラヌラと出すぎないようにして欲しい、等)をリクエストして「中屋万年筆」へペン先とインクフローの調整に出したところ、リクエストした通りのすばらしい書き味になって戻ってきました。(現在はここの万年筆の購入者しか受け付けていないのが残念・・・)
職人の技術力には驚きです!
ペン先の方は相変わらず絶好調なのですが、最近になってボディの方がいささかくたびれてきました。そこで、買い替えを検討すべくこのペンについていろいろとネットで調べてみたところ、「梅田晴夫」という方が「The 万年筆」と銘打って、究極の万年筆を目指して設計したペンであることが分かり、がぜん興味が湧いてきました。
調べていくうちにだんだんおもしろくなってきたので、ブログの形で残してみることにしました。
少しでも万年筆を使う喜びが伝われば幸いです。
(2009/8/23 記)