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【 プラチナ #3776 ④】 梅田晴夫と『The 万年筆』について [万年筆]

 

Wikipedeiaの梅田晴夫の項にある「プラチナ#3776」の開発にまつわるコメントの中には、開発に協力した作家として開高健の名前が挙げられています。

開高自身はモンブランの愛好家であり、自分が愛用していたモンブランについて綴った「この一本の夜々、モンブラン」という作品があります。

おもしろいことに、この中で梅田晴夫が開高健に#3776の開発にあたってアンケートをおくってきたことを書いているくだりがあります。

「・・・のちに“ザ・万年筆”と命名して売り出されることになる万年筆の開発に着手し、アンケート用紙を送っておいでになったことがあった。」

とあるので、プラチナ#3776のために梅田氏が開高氏へアンケート用紙を送ったことを指しているのでしょう。

 梅田氏には、この万年筆と同じ名前の「The 万年筆」という万年筆に関する話を集めた著作があります。本の出版は1974年6月ですので、#3776発売の4年半前になります。

 


 

 

 

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この「The万年筆」は氏のコレクションの紹介のみならず、日本や世界の万年筆にまつわる話、万年筆の手入れなど様々な小話が載っており、万年筆愛好家であれば手元に置いておきたい一冊です。(現在は絶版なのが残念。)地元の図書館に蔵書があったので、借りてみました。

梅田氏は愛用の一本として並木製作所(パイロットの前身)が製作した「ダンヒル・並木」の万年筆を絶賛し、毎日使っていると書いています。他の記載を見ても、どちらかというとパイロットの関係者との付き合いが多い印象を受けるのですが、なぜ「究極の万年筆」を開発するに当たって、パイロットではなくプラチナとの開発を選択することになったのか、興味深いところです。

なお、同書では「プラチナ」の社史から引用したプラチナの沿革が簡単に紹介されています。ざっと引用してみました。

・大正八年(1919) 中田俊一氏が中屋製作所を創立。 『生涯ひたすら優秀な万年筆の完成に心血を注ぎ、また一方では優秀な技術者の育成、社員一同の和を計り、協力を得て、経営、販売、製作部門を総合し、近代工場に発展させました。』と中田氏について触れている。

・戦後、「プラチナ産業株式会社」となり、さらに昭和38年6月、現在の「プラチナ萬年筆株式会社」と社名変更。

・会社の姿勢:『常に業界をリードし、社会に公益をもたらす万年筆を作り、信頼にお応えすべく不断の努力で前進するのが創立者の道を継ぐものの使命』

 

 


 

 『生物としての静物』

 

生物としての静物 (集英社文庫)

生物としての静物 (集英社文庫)

  • 作者: 開高 健
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1994/02
  • メディア: 文庫

「この一本の夜々、モンブラン」が収録されている本。

万年筆の愛好家であればぜひ一読をおすすめしたい名文です。

 

 


【追記】

わたしは開高健の作品が好きで、氏が愛用するモンブランをいつか自分も使ってみたい、とあこがれたことがありました。(Montblank 149)

氏の愛用していたモデルはモンブラン149の中字。インクはパイロットのブルーブラック。

知り合いが持っているモンブラン149で字を書かせてもらったことがありますが、自分の手の大きさに対して軸が太すぎる感触でした。

(「太陽 特集・開高健」(1996年)より) 

 

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