【暮しの手帖】『愚劣な食器洗い機』主婦をあまく見てはいけない(花森安治)1968年 [生活の知恵]
暮しの手帖 第1世紀 98号(昭和43年(1968年)12月1日発行)
本号では、この年の2月にナショナル(松下電器産業)が「食器洗い機」、日立が「全自動食器洗い機」を売りだしたことを受けて、これをテストした結果を掲載しています。
「愚劣な食器洗い機」〜主婦をあまく見てはいけない〜
これまで徹底的なテストを通じて商品に辛口の評価を下してきた「暮しの手帖」ですが、このタイトルはかなり刺激的。
特集では、ナショナルと日立、比較としてGE(海外製)の皿洗い機を比較した結果、いずれの商品でも洗浄後の汚れの付着が多く、あまりにも成績が悪いので、編集長の花森安治の筆も重くなっている様子。
「これまでも、何度か商品テストの報告を書いてきたが、
こんどみたいに筆の重いのは、はじめてである。
<記事の概要>
・はじめに、主婦に好きな家事と嫌いな家事のアンケートを行った結果を紹介。
嫌いな家事
掃除 41%、後片付け 26%、洗濯 10%、料理 9%、きらいなものなし 14%
好きな家事
洗濯 37%、料理 34%、整理 7%、裁縫 7%、掃除 6%、後片付け 2%、好きなものなし 6%、その他 1%
・食器洗い機のテスト
お湯(給湯器もしくはヒーターで加熱)で洗浄後、水を切った後にヒーターで乾燥する方式。最初に洗剤を入れる。
回転する棒についている細い吹き出し口からお湯が噴き出して食器を洗浄する。
水の量は日立、ナショナルとも4L。GEは12リットル。
皿や茶わんに汚れがついた状態でテストを実施。洗浄後にもこれらの汚れが皿や食器にこびりついている。また、ナショナルは乾きがわるい。
テストした3機種。(GE、日立、ナショナル)
ナショナル製(NP-100)が29,500円、日立製(KF-1000)が53,000円。
過去にミシンの記事で1964年の物価と2000年の物価を比較して、現在は約4倍と推算しました。現在の物価に換算すると、10〜20万弱の価格。決して安い買い物ではありません。
洗ってみてあきれかえる
商品テストの結果の概略。
ナショナルと日立は、どちらも60回ずつ洗ってみた。全部、きれいに洗えたなあ、というのが、60回中、日立は一回もなし、ナショナルが、15回。まあふきんでふきとる程度で、がまんするか、というのが、日立は5回、ナショナル1回。あとは、とにかく、もう一度手洗いで洗い直さないと、とても気持ちが悪くて、使えたものではない。
横倒しにした食器洗い機を掲載した有名な写真
テスト結果の講評
なけなしのゼニを出してまで、君たちのモルモットには、もうならない。
あまく見ないでほしい。
次号(「暮しの手帖 99号」)では、三洋製の食器洗い機が。
「サンヨーからも出た 食器洗い機」
サンヨー製の食器洗い機(定価53,000円)は、現在の主流である横長タイプで、洗浄水量が多く、さらにヒーターも出力が高くなっています。
とはいえ、テスト結果は「とにかく、このサンヨーの食器洗い機を一言で批判すると、いくらか日立あたりよりよいとはいえるが、全体からみると、五十歩百歩、欠点だらけの未完成である」とバッサリ切られています。
<所感>
我が家では、パナソニック製の食器洗い機を毎朝晩使っています。
ざっと食器を洗ってゴミを取ってから食器乾燥機に食器をセットしていることもあり、食事の残りカスが極端に付着することはありません。
共働きということもあり、朝の忙しい時間に食器をサッと仕込んで出勤し、家に戻れば乾いた食器を回収できる、というのはとても便利。
当時の食器洗い機がなぜここまで批判されてしまったのか、現在の食器洗い機と比較してみないと真相は分かりません。
現在の食洗機では、乾燥後にご飯粒が食器に残ることは少ないので、洗浄水と食べ残りの分離がしっかり行われるようになったのでしょう。また、全自動食器洗い機の専用洗剤の品質向上効果も大きいはずです。
現在の食洗機で問題があると感じない背景は、こういった改良点の相乗効果が大きいのではないかと思います。
<関連サイト>
<当ブログ内関連記事>
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・ 【暮しの手帖】 『ジグザグミシンは役に立つか』 直線ミシンの良さを強調した記事(1972年)
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