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【暮しの手帖:告発記事】「ポッカレモンとビタミンC」(1967年 第一世紀89号) [生活の知恵]

 

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昭和42年2月8日に発行された「暮しの手帖 第一世紀89号」

 

この中では、ポッカレモンCの大瓶にビタミンCが含まれていなかったことが書かれています。 

 

 

 

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記事の扱いはそれほど大きくありません。 

 

 

 

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ビタミンCの分析結果。

 

ポッカレモンの容量は90ml~720mlまで5種類あり、そのうち一番大きな大瓶のみビタミンCが入っていなかったというもの。

正確には、ビタミンCの入っていなかった瓶には「100g中ビタミンC100mg強化」の文字がはいっておらず、残りの瓶には表記があるので、商品そのものには問題がないようです。 

 

広告上はこの点が明記されておらず、他の容量のビンと同じようにあたかもビタミンCが含まれているかのごとく表記されていたので、その点について問題提起しています。

 

 

 

 

この記事は大きな波紋を呼んだようで、1967年5月の国会で討議された記録が残っています。 これを読むと、暮しの手帖による発表直後から製品回収が行われている事がわかります。

 

参議院会議録情報 第055回国会 予算委員会 第17号 昭和四十二年(1967年)五月二十日(土曜日) 

 

<以下引用> 

 

 ○委員長(新谷寅三郎君) 次に、鈴木君の質疑を行ないます。

 ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕


○委員長(新谷寅三郎君) 速記を始めてください。鈴木君。


○鈴木強君 前回私がポッカレモンをはじめ、ジュース関係を取り上げまして、これの価格表示の取り締まりについて御質問したのでありますが、政府側の明確な答弁がございませんでした。そこで、ひとつ直接の担当である厚生大臣から、このいきさつですね、それから、法務大臣のほうからも、刑法上の取り締まりですね、これについての問題が出ておりますから、その後の、十分相談したと思いますから、結果を報告してもらいたい。


○国務大臣(坊秀男君) 先般この委員会におきまして御質問を受けました。それにつきまして、それまでのこの事件の経過及びその後厚生省としてどういうことをやったかということにつきましては、詳細係官からお答えさせます。


○政府委員(中原龍之助君) お答えいたします。

前回ポッカレモンにつきまして御質疑がございました。その後、関係官庁にいろいろ分かれているものでございますから、私ども事務的に関係官庁といろいろ相談をいたしました。そういたしまして、この問題の主点は、広告の問題というような問題が主点になっております。したがいまして、本筋といたしましては、大体公取のほうで取りまとめていくという形になっております。細部のいろいろの問題になりますと、事務的に各省が大体取りきめをしていくという形になっております。


○鈴木強君 そんな形式的なことは聞いてないですよ。この前具体的な問題を質問して答弁できなかった。委員長、おかしいですよ、そんな答弁をあのとき求めてないですよ。
 それじゃ厚生省の場合ですね、特殊栄養食品としての認可を与えておるわけですから、そういう立場からこのポッカレモンとらえてください。そうしてそのいきさつと、その後の措置、現状どうなっておるか。


○政府委員(中原龍之助君) ポッカレモンにつきましては、いわゆる特殊栄養食品としての申請が出まして、そうしてその申請に基づいて所定の検査なり、それから審査なりいたしました上でこれを許可しているのでございますが、その許可といたしましては、その包装とか、びんの大きさとか、そういうものではなくて、その飲用に供するそのもの自身について、はたして規定どおりの、この場合はビタミンCでございますが、このビタミンCが入っているかどうかについていろいろ審査をして許可していくわけでございます。したがいまして、今回の問題になりましたのは、前回も申し上げましたけれども、いわゆるびんごとの、容器ごとの許可ではございませんので、それから、また、販売する場合におきまして、特殊栄養食品は正規に許可されたいわゆる表示をして販売するという形になっております。したがいまして、正規に許可されて販売されているところの、この場合、ビタミンC強化ポッカレモンといいますこれについては、その中身その他につきまして全然違反はございません。ところが、七百二十ミリリットル入りましたところのポッカレモンにつきましては、これは表示といたしましては、いわゆる特殊栄養食品である表示をいたしておりません。普通の飲料水になっておりますので、このもの自体に対しましては栄養改善法の違反にはならないわけでございます。ところが、たまたま新聞紙上、そういうところにおける宣伝の中に、現在許可している品物と、出ていないはずのもの、七百二十ミリリットルのものを並べて書いてある。ところが、実際には許可したものはなくて、そうして普通の清涼飲料水であるところのポッカレモンが実際には市場に出たというようなことでございます。したがいまして、その広告のやり方におきまして、通常のいわゆる清涼飲料水であるところのポッカレモンが、ビタミンC強化ポッカレモンという特殊栄養食品と間違われるような印象を与えておる、こういうところがいろいろ問題点になったわけでございます。したがいまして、これはいわゆる広告の問題になっておりまして、栄養改善法で言うところのそのものずばりの、いわゆる法律には抵触をしていないというようなかっこうになっておるわけでございます。それでこの当時、先生からいわゆる資料の不準備を突かれたわけでございますが、私どものほうといたしましては、これを承知いたしましたのは、たまたま「暮しの手帖」に載っておりました記事を見ましてそういう事実を知りまして、直ちに調査を開始して、そうして業者にいわゆる指導をいたしまして、いろいろのその指導に基づきまして、業者が自主的に広告の訂正であるとか、あるいは間違えられやすいようなそういう性質の清涼飲料水であるところの七百二十ミリの回収を開始をしたというようなことでございます。これが大体今回の事件のあらましということになっておるわけでございます。


○国務大臣(田中伊三次君) 法務省の立場におきまして、本件を関係各省と連絡調査をいたしました。もちろんその調査は、厚生省のごとく、食品の内容を分析する等の調査はできません。また、それは越権でございますので、栄養改善法第十二条に反する罰則、これを中心とする調査、それから、不正競争防止法第五条に関する罰則中心の調査、それから、不当表示防止法、これは第四条であったと記憶しますが、これに関する違反なきやいなやという調査、それから、もう一点は、問題となりました刑法における詐欺罪の問題、主として軽犯罪法につきましても調査をいたしましたが、主として以上申し上げました四点の罰則の適用問題に関しまして積極的に調査をいたしました。その調査に当たりました刑事局長からその詳細を御報告申し上げます。


○政府委員(川井英良君) ポッカレモンの問題につきまして、主として刑罰法令の解釈の観点から、若干の事項について関係官庁に照会をいたしまして、事実関係を承知した上で、調査といいますか、法務省としての法令の解釈、適用について検討をいたしましたので、その結論につきまして簡潔に経過と考え方を御説明申し上げたいと思いますが、いま法務大臣からおっしゃいましたように、事実関係が必ずしも訴訟法的に明確、かつ、確定された段階ではございませんので、これが何法の第何条に該当するのだということを的確に申し上げることは困難でありますし、また、この席上で私の立場からそういうことを断定的に申し上げるのは適当でもないように思いますので、あらかじめその辺のところは一応御了承いただきたいと思います。
 最初に、いま厚生省のほうから御説明があったようでありますが、この栄養改善法第十二条に関する問題でございますが、これは条文そのものに、販売する食品について何々の表示をするには厚生大臣の許可を受けなければならないというふうに規定されておりますので、まず広告は入らない。したがって、販売をする物品そのものについて表示があるかないかということで判断がきまると思うのであります。なお、表示という概念から申しましてもさように解さなければならない、こう思うわけでございまして、事実関係によりますというと、問題になったいわゆる大びんにつきましては、その旨の表示が物品そのものにはないそうでありますので、そうだといたしますというと、この条文には本件の場合には当てはまらない、そういうふうな解釈が法律解釈として相当ではなかろうか、こういうふうに思うのでございます。
 なお、いま承りますと、厚生省当局では、この十二条には当てはまらないとしても、その広告の方法についてまぎらわしい、妥当でない点があったというので、行政指導でもってさような広告は今後しないようにという指導をとられたそうでありますので、私どもも、この関係におきましては、この辺の始末が適当ではなかろうか、かように考えるのであります。
 それから、その次に問題になりますのは不正競争防止法の第五条であろうと思います。御承知のとおり、この五条には、商品またはその広告に、その商品の品質、内容等について誤認を生ぜしむる虚偽の表示をなしたる者は三年以下の懲役とか、二十万円以下の罰金に処すと、こういうふうな規定に相なっておりますので、この場合には前者の場合とやや内容が変わってくるのではなかろうかと、こう思うわけでございますので、ややこまかくなりますが、場合を分けて考えまして、本件のポッカレモンというものが、天然の果汁が入っていないのに入っているように表示し、ないしは広告をしているという問題と、それから、もう一つは、ビタミンCが強化されていないのに強化されているような表示ないしは広告が行なわれておったと、こういうふうなことが前回の委員会で問題になっているようでございますので、さように分けて考えてみますというと、最初の天然果汁の点につきましては、私どももあとで容器を拝見いたしますというと、レモンの図柄が出ているようでございます。その図柄を除きましては、文字としての表示では、天然果汁がすべて入っているんだ、しかも、天然果汁を全部ないしは主たる成分としてこれが入っているんだというふうなことの表示はないようでございます。広告においても、それから、物品そのものの表示においても、ただ、いまの天然レモンの絵を描いた紙が張りつけてあるということのようでありますので、その辺の事実関係を基本にいたしましていまの法律の解釈を検討いたしてみますと、この天然果汁の点については、それを主たる成分としてこれができ上がっているんだというふうな、全く入っていないのに、あるいはごく微量しか入っていないのに、多量にそれが入っているんだというふうな、こういうふうないわゆる虚偽の表示がなされていると、こういうふうに法律上認定するには、これはいささか無理があるのではなかろうか。単なる絵が張りつけてあるというだけで、一応現在の社会の国民常識なり社会の通念からいって、絵だけであって、その他に何らの文字があわせて記載されていないというところから見ますというと、なお、承りますというと、このポッカレモンには、大びんのほうも加えて、多少の天然果汁が分析の上入っているというふうなことを関係当局から説明を受けておりますので、さような事実関係もあわせて考えますというと、この虚偽の表示というのは、いまの天然果汁の点については、いささか法律解釈上無理があろう、こう私ども考えておるのであります。
 それから、その次にビタミンCの問題でございますが、この点につきましては、七百二十ミリの大びんのほうにはCが入っているという表示が、先ほどの御説明によりましても、ないそうでありますので、商品の表示そのものからいうならば問題はなかろうと思います。ただ、新聞広告等によりますというと、いかにも小びんと並べて書いてありますので、消費者に大びんのほうにも広告の面ではビタミンCが強化されているというふうな疑いを生ぜしめるまぎらわしい表示があるというふうなことがうかがわれますので、この点につきましては、確かに私ども見まして、七百二十ミリにつきましても、いかにも広告の面ではビタミンCが強化されているんじゃないかというふうな疑いを持つのももっともだと思われるような気がいたします。ただ、そういうふうな誤認を生ぜしめるようなおそれがあるということは認められますけれども、ただこの点だけをとらえまして、だから不正競争防止法に言うところの、五条の、広告について、その品質、内容について誤認を生ぜしむる虚偽の表示をしたと、こういうふうに法律解釈として断定するにはいささか無理があるんじゃなかろうかというふうな気がしているわけでございます。先ほど、担当の行政当局が、広告のしかたについて適当でないものがあったということで、行政的な措置として、以後その種の広告については是正の処置を命じて、是正されておるというふうなお話がありましたけれども、私どももやはりその辺のところではなかろうかと考えているものでございます。
 終わりに、刑法の詐欺の点でございますが、詐欺の点につきましては、あらためて御説明申し上げるまでもなく、詐欺罪は、人を欺罔して財物を騙取するということで成立する犯罪でございますので、その適用の関係は、ある意味では非常に広いわけでございます。しかしながら、一般の商取引の場合、特に物品を販売するにあたって広告宣伝をするにあたって、その行為が詐欺罪になるかどうかということにつきましては、いろいろ解釈ないしは適用の問題についてケースがたくさんございまして、一般的概括的に申し上げますというと、広告宣伝の場合には、広告宣伝ということばそれ自体にすでに多少の虚偽なりあるいは多少の誇大性というものが含まれているんだと。特に物品の販売というふうな場合においては、社会通念上許される程度の誇大な広告ないしは若干の虚偽を含んだ宣伝が許されているんだというふうなことも言われておりまして、特に物品販売にあたりましては、広告宣伝との関係において詐欺罪の成否については、御承知のとおり幾多の積極ないしは消極の判例、学説、解説がいままでに公にされているわけでございます。したがいまして、本件の場合に、必ずしも私ども正確な事実関係というものを証拠をもって認定したわけではございませんので、その事実をとらえまして、特に七百二十ミリの大びんについて、さような広告あるいはさような種類、内容、品質のものを、言われているような方法でもって販売をしたという行為が、いまここで私の立場から、すぐそれが詐欺罪になる、あるいは詐欺罪にならないというふうな断定は申し上げるのは適当でないと思いまするし、また、そういうことを確定した事実を前提にしないで犯罪の当否を議諭するということは非常に困難な問題であろうと、こういうふうに思っているわけでございます。
 なお、もう一つ、公取のほうでお調べになっておる事項について大臣からもいろいろ言及があったようでございますけれども、これはまたそちらのほうにおまかせしたいと思います。


○鈴木強君 いまの局長の見解というのは、私は非常に問題がある。これは全部返上します。少なくとも、法務大臣は、前回、ここに現物がございますが、この大型のレモンを見られ、さらにまた、この中に入っております広告ですね、ただ単に新聞ではないんです、そういうものをごらんになって、その結果、「表面の形式的表示と中身が違うということになりますなれば、これは業者は詐欺の加害者としての嫌疑がある、そういう疑いがあるものと推定されることはやむを得ないものと存じます。」と、こういう御答弁をされているんです。ところが、いま、局長の御報告は、事実関係について現物を見ておらないと、こういう前提の上に立っての見解なんです。これじゃ全然問題にならない。ですから、言われている内容というのは、まるきり私の申し上げたこととはピントが百八十度ズレているわけだ。まあ大臣がどういうふうに局長に指示をされたのかわかりませんが、いまの見解の表明というものは、まことに事実からかけ離れたものでありまして、ここで私たちがそれをよろしゅうございますと言うわけにはいきません。なぜもう少し具体的にこういう事実関係を見ていただいて、その上に立って――これは少なくともいま大事なことでございますからね、慎重にやるべきだと私は思うのであります。あなたは、慎重に関係者と連絡をすると言っておきながら、こういう答弁をさせたことは、私は納得できない。これはたいへんな問題ですよ。


○国務大臣(田中伊三次君) どうぞ誤解をしていただかずに、ありのままに申し上げることをお聞き取りをいただけばわかることで、誠意をもってやっておるのでございます。本来は厚生省がやるべきものだ、告発して持って来い、しからばおれのほうはやるという態度でもおかしくはないわけでございますが、この問題はあやふやにはできぬ。消費者大衆に影響のあることでございます。私の家庭でも実は使っている、この大びんを。本日来る私の車の中で運転手に聞くと、運転手の家庭も使っている。途中で事務所に寄って事務所の女の子に聞いてみると、私のところでも使っておりますと、こう言う。これは消費者大衆に重大な影響のあることでございますから、罰則の適用解釈ということを理由にして、関係官庁に、おまえのほうから積極的連絡をして調査しろ、これは捨ておけぬことだぞという指示を与えたので、ただいま申し上げましたように、栄養改善法、不正競争防止法、不当表示法――刑法はもちろんのことでございますが、この方面について積極的な態度をもって調査をしたのでございます。
 そこで、一つお聞きを――大事なことでありますから、よいかげんなことを調査をして、よいかげんなことを言って逃げるのじゃないということをはっきり申し上げたいのは、いま厚生省からも私の局長からもお耳に入れましたように、この問題は、誤認を生ずるようなあやふやな表現をいたしますばかりでなく、それだけでなく、かつ、その上に虚偽の表示をしておるということが罰則の要件となっておるのでございます。これは、それがいいか、悪いかは別ですよ。法律がそうなっている。誤認を生ずるような表示だけでは罪にならない。誤認を生ずるようなあやふやなそういう表示をしておるばかりでなく、うその表示をそこにしておるという二重のワクがはめてある。おそらく、法律の行き届かないところでございましょう。その二重の表示を分析して考えてみるというと、先生ごらんのとおり、ポッカレモンというりっぱな大きな、これを図柄と私の局長はきょう言うておりましたが、そういう写真が出ているんですね、レモンの写真が。だれが見たって、レモンの写真が出ておると、この中にレモンが入っておると思う。私が見ても、うちの家族もそう見ている。しかるに、ビタミンCが入っておるという表示がない、こういうことなんです。したがって、この法律の欠陥をとらえた、まことにいやな、巧妙なやり方であるという判断をする以外にないのであります。この不正競争防止法第五条に関する解釈におきましては、法律にひっかからない。まことに遺憾ながらひっかからない。この法律は、いかにこれを取り扱うかという問題は、将来、国会においても政府においても考えなければならない問題でございましょう。そんな二重のワクをはめておる。二重のワクにひっかからないということは不問にされるというようなことは、あるべきものでない。それでは消費者大衆に対する政府の責任というものがいかがかと考えるという点が一つございます。これは、その法律の内容が正しいかどうか、将来どうするかという問題は別個にいたしまして、現行の不正競争防止法第五条の条文に基づくならばひっかかりようがないということは、これはどうぞ私の局長の申し上げておりますことを信じていただきたい。法律解釈としてはそういう解釈以外に道はないのでございます。
 それからもう一つの点は、詐欺の問題でございます。詐欺の問題というのは、御承知のとおり、欺罔手段を用いて相手を錯誤におちいらしめた場合に詐欺が成立するわけでございます。そこで、この席に被害者がおって、被害者が答弁に立ったり調べを受けておるわけではございませんので、このびんをつくって売っております会社、その責任者というものを加害者と見まして、加害者的な立場に立ちまして本件の形式をとらえれば、私が前回の答弁の際にはっきり説明をいたしましたように、表の表現と中身が違う場合には詐欺の加害者としての疑いを受ける余地があるということを明瞭に申し上げたのでありますが、これは本日の席においてもそのとおり申し上げ得ることでございます。そこで、さて一歩進んで、しからば具体的な本件については、具体的な詐欺罪が成立をするのかどうか。疑いがあるというようなことでなしに、前回は疑いがないということを保しがたいということを申したのでございますが、疑いでなしに、現実に認定はどうなるのかという問題でございますが、これは、あえて理屈を言うわけではございませんが、詐欺罪は被害者の被害の態様によってそれぞれ詐欺の成立過程は違ってくるわけでございます。それは何か詭弁を弄しておるようにお考えをいただきますと申しわけがないので、具体的な例をあげますというと、このポッカレモンという場合を考えてみるというと、ポッカレモンというものを被害者の立場でどういう心情でこれを買い求めたのか。もっと具体的に言えば、何に重点を置いてお買いになったのか。天然のレモンの果汁でできておるものだということを信じ、これに重点を置いて、これに希望を託して買ったのだということになりますと、調べてみた結果は、ビタミンCが少なかったとか、全然入っていなかったとかいうことになれば、これはもう詐欺が成立する見込みは十分にあると言わなければならない。それから、いや、そういうむずかしいことを思って私どもは買ったんじゃないんだ、これは飲めばすかっとするから――すかっとさわやかなんていう広告もよく出ておりますね。(笑声)これはすかっとさわやかになるから……


○鈴木強君 それはコカコーラだ。


○国務大臣(田中伊三次君) コカコーラだが、この場合でも、すかっとすると言う人もある。きょう私は車の中で聞いてみるというと、あれは、先生、飲めばすかっとしますよと言うんです。ですから、すかっとするというから買ったんだという、害すかっとするということに重点を置いて買い求めたという被害者があります場合に、この被者は飲んでみてすかっとしたと、こういうことが事実あった場合においては、この場合は、同じ商品を買ったんだけれども、買い手の態様が違いますから、詐欺は成立をしない、こういうふうに考えざるを得ない。すなわち、詐欺罪の刑法上における特質中の特質は、被害者たる者、これを買い求めたる者が何を重点に置いて買い求めたかということを明確にいたしませんと、現実に欺詐罪が成立をするかどうかの確定的議論をここでするわけにいかんというのがただいま局長の言っております表現でございます。私の表現の半面を言っておるわけでございまして、決してよいかげんなことを言っておるわけではない。こういうふうに考えますというと、具体的に本件はどうなるのかというお尋ねに対しましての結論の答えは、被害者を取り調べ、被害者がいかなる意思によって買い求めたのかと、結果はどうであったかということの調査をいたしませんと、最終的に本件が捜査の結果詐欺になるかならないかということを軽々に言うわけにはいかない、こういうことになるわけであります。
 それでは、どうするのかという問題でございますが、これは私は刑事訴訟法の手続によりまして捜査を進めていく以外に道がない。すなわち、具体的にはどういうことかというと、関係官庁から告発がある場合もございましょう。ただいまちょっと局長が申しました中に、不当の表示を防止するための不当表示防止法という法律がございます。その法律に基づきまして公取当局はただいま調査をしておられるものと連絡の結果聞き及んでおります。その調査の結果、それが不当なものであるということの認定になります場合においては、いわゆる行政命令としての排除命令をもって、そういうことがまぎらわしいではないか、以後注意をしろ、いままでやったことを取り消せという排除の命令が行なわれるはずでございます。その排除を聞かざる場合に、はじめて本法による罰則が適用される。その場合においては、告発があろうかと存じます。しなければならぬわけではないが、してもおかしくはないわけである。そういう告発があります場合においては、そういう告発によって捜査当局は捜査を始める。あるいは、投書があっても捜査はできる。被害者の告訴があれば、なおけっこうであります。告訴、告発、投書、その他何らかの捜査の端緒となるべきものが、これだけ大問題になっておるわけでございますから、将来あれば、今日にもあれば、それについて刑事訴訟法の手続によって捜査を進めていくということはここで言明するにやぶさかでないのであります。
 詐欺という罪の本質から言いまして、被害者を調べずしてこれは詐欺確定的でございますと、そんな無責任なことは言うことはできぬ。詐欺の加害者たるおそれがある、そういうふうに認められてもやむを得ない状況にあるではないかと一応加害者の立場からこの現物を見て考えられる。現実に成立をするかどうかは、被害者を調べなければわからぬ。こういうことは決して詭弁でない。どうか、それはひとつお考えをいただきたい。しかし、おまえの言うことは理論に合わぬ、刑法解釈上何を言うかということがあれば、承って私はえりを正したい、こう考えるわけでございます。


○鈴木強君 私が問題にいましたのは、少なくとも大事なことですから、局長からの御答弁によりますと、事実関係に対する調査が非常に不十分ですね。せめてその現物でもごらんになって、一体、この七百二十ミリリッター入っておる大びんについては、ここに英語の表示がありますが、この英語の文字はどういう意味なのか。それから新聞新聞とおっしゃるが、こういうあと四種類の――四種類のにはこれは入っておるようです、検査してみますと。だから、これはいいんですよ。これは私は悪いとは言っていない。しかし、この中を見ると、七百二十ミリリッターの中にもビタミンCが強化しておると、厚生省許可の特殊栄養食品だと、こう書いてあります。そうして、ここには、生レモンの三倍のビタミンCが入っていると、こういう「レモンのある暮らし」という、案内が入っておるわけだから、こういうものを買えばこれが入っておる、これを見れば必然的にこれを買う、これを買えばこの中には何にもビタミンCが入っておらない、こういう仕掛けになっているわけですから、しかも、この英語を大臣読んでみてください、ここに英語が書いてあるから。この中に自然の天然果汁が入っているということが――私はへただからわからぬが、自分で訳してみたんだが、ポッカレモンは優秀な職人によってりっぱにつくられている。長い経験と熟練した技術で評判があり、名声を博している。天然レモンのおいしい味と書いてある、英語に。こうなると、明らかにこれは詐欺の面における適用法規が考えられる。私はちょっと不勉強ですから、もし違っておりましたら御指摘をいただきたいんですが、たとえば軽犯罪法第一条第三十四号に、「公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者」「を拘留または科料に処する。」ことができると、こういうものがあるわけだから、さっき軽犯罪法のところにいきましたら、局長が言ってくれなかった。他の関係法律については触れられましたけれどもね。こういう条項もあるわけですから、もう少し事実関係というものを明らかに調査された上で、少なくとも国会に対して答弁してもらいたい。私も、法律を強化するよりも、むしろこういう国民の世論の圧力が業界をボイコットする、そのメーカーを。そういうことによって抜きがたい致命を与えるわけですから、そのことも考えておりますけれども、そこはやっぱり法律ですから、その点をもう少し慎重にやってもらいたかったということを私は言っているんですよ。


○国務大臣(田中伊三次君) 私は、お説のとおり、そう思うのです。それで、この問題は、あまりここでいろいろなことを申し上げるのはいかがかと思います、厚生省に関することでございますが。一体、レモンのここへ図柄まで出して、しかも大きく図柄をクローズアップするように出しまして、それで中身の全部を説明したようなふうに見える図柄を出しまして、そうして表示自体をやっていない、こういうことで、しかも、売り方も、新聞広告を見ましても、その他のやり方も、ちゃんと表示のある小びんについてこれは法律どおりのことをやっておいて、その正規の小びんと並べて大びんを売って、これは徳用びんでございますと言わぬばかりの販売のやり方である。まことに巧妙きわまる販売のやり方であると言わなければならぬ。こういうものが取り締まれないということになりますと、全くこれは無害であってかってなんだ、厚生省が行政指導をやるのは聞いてもいいし、聞かないでもいいんだというようなことでこういう大事な大衆の飲料というものが販売が日本国において許されるということは私は許すべきものではない。それならどうするかという問題は、いま申し上げますように、この不正競争防止法という法律の第五条が念が入り過ぎて、二重のワクがはまっておるからひっかからぬようにできておる。これがワクが一本とか、これが独立のワクであるというと直ちにひっかかる。まぎらわしい広告をして、まぎらわしい表示をすることは許さぬのだ、これが一本の独立したものであるとひっかかる。まぎらわしいものであると同時に、うその表示がなければならぬのだと、こういうことが、要らぬことが書いてある。こういう場合もございましょう、必要な。しかしながら本件の場合を申し上げますと、先生の御意見と同様に私はまことに遺憾である。この刑罰法規を取り扱う法務省の立場から申しますと、こういう私は法規の内容はまことに遺憾である。これが私の言うように、独立した条項のものであるというと、直ちに罰則ができる。極端に言えば、直ちに告発のしかたいかんによっては逮捕もできる。こういうことになるわけでございますが、これは私の説明がいいかげんなことでそうならぬのではない、法律がそうなっているということ、ここをよく御理解をいただかぬと私の苦心と熱意が何にもならぬのです。おまえいいかげんなことを言うじゃないかとか、局長にいいかげんなことを言わせているんじゃないか、そういう心持ちはさらにない。これはやらなければいかぬと考えておる。そこで、刑法上の問題につきましては、この第五条の問題を離れて措置ができるわけでございます。できるわけでございまするから、軽犯罪法の第一条の三十四号ですね、三十四号に、軽犯罪法にもそういうことがございますので、先ほどからお話をいたしますように、刑事訴訟法の手続によりまして積極的な熱意を持って善処をしていきたい、こういうふうに御承知をいただきたい。


○亀田得治君 関連。先ほどの法務省の見解は、まことに納得がいかぬわけです。それは第一には、不正競争防止法の五条ですが、「誤認ヲ生ゼシムル虚偽ノ表示」、法務大臣は、これは二つの要件だと、こう言われますけれども、要件は一つですよ。虚偽の表示であるかないかですよ。何か二つあって、非常に複雑なようなことをおっしゃっておりますが、虚偽の表示であれば当然誤認を生ぜしめる。当然これはつながるわけです。虚偽の表示かどうか、きめては。ところが、これは絵のことは、皆さんも非常に注目している、この絵のことは。ところが、前のほうにはいま鈴木委員から言われたように英語で説明が書いてある。これはよくわかりにくい。ところが裏のほうではちゃんと日本語で、ポッカレモンは新鮮なレモンのかおり、成分をそのままの状態でびん詰めにしたものです。こうちゃんと書いてある。これは英語じゃないからもうはっきりしておるのですよ。しかもレモンがここに入っておらない。これは分析の結果はっきりしておる。新鮮なレモンのかおり、これはあなた天然でしょう。それから成分でしょう。天然のレモンの成分でしょう。こういうふうにだれだって考えますよ。そのままの状態でびん詰めにしたものです。これが誤認を生ぜしめるような虚偽の表示に当たらないという解釈がどうして出てくるのか、一体法律の解釈というものは、そんな世間の常識とかけ離れたものじゃないはずです。これはどうしても納得いきません、この点は。で、先ほど皆さんが言われたのは、盛んに絵のことだけなんです。絵だけでなしに、いま申し上げたこういう説明まであって、どうしてこれが虚偽の表示にならないのか。もう一ぺんはっきり言ってください。そんなことがならぬということなら、これに類したことは幾らでもくふうできますよ。レモンだけでなしに、これだけでなしに、ほかの商品についても、これは消費者としてたいへんな迷惑です。
 それからもう一つ、これは関連ですから一緒に聞きますが、法務大臣、何か思案しておいでのようですが、もう一つは詐欺罪の関係ですね。それじゃ法務大臣から先ほどるる説明されましたから、私のほうで十名なり十五名なり、これに天然レモンが入っているという表示のとおりと思って、買ってだまされた、けしからぬ、こういうものを十名なら十名そろえて告発をすれば、検察庁は積極的に捜査に乗り出しますか。端的に聞きましょう。先ほど法務大臣は刑事訴訟法のルートでやるといったようなことを再々おっしゃるわけですが、募集すればたくさん出てくると思う。どうですか。二点。


○国務大臣(田中伊三次君) 御意見、前段のほうでございます。それみな沈んでおります。英語も読んでおります。それから裏の小さい説明、もっともらしい説明も読んでおります。それを先ほど申しましたように、これを総じて誤解を受けるような表現と思います。先生お説のとおり、けしからぬ誤解を受ける表現であると私は思う。しかし、いま先生のおっしゃった虚偽の表示にはならぬ、虚偽の表示はやっぱり分析的に栄養の成分に関してこういう補給ができるのだ栄養成分に関する補給の中身というものを数字をあげて虚偽の、うそと、実際にそうではないのにかかわらず、そういううその表示をしておるということがございませんと、それはそういう判定はできないのではないかということ。
 それから一つか二つかというのは、私は説明的に二つの要件がからんでおるということを言いましたが、これは一つと見てもいいのです。文章も一つと読めるのでございますが、一つと読んだ場合は、一つの表現の中身は私の言ったように二つある。これは同じことですけれども、そういうことになるわけでありますので、その点はそういうふうにお聞き取りいただきたい。これは私の解釈が間違っていないと考えます。
 それからもう一つは、十人なら十人、多数が告発したら積極的にやるかと、これはお尋ねまでもない、十人でない、一人でよろしい。一人でも私はこういう考えで買い求めたところが、事実はこうである、国会でも問題になっている、これはほっておけぬということで、できればひとつ告訴、これが一番でございます。告発でなく告訴、それからあるいは投書、まあなるべくひとつ被害者が、大事な詐欺事件でございますから、私の意見を尊重していただいて、なるべく被害者が告訴をしていただけば、十人もお手数をわずらわさぬでも、一人だけでけっこうでございます。それは警察あるいは検察直接でけっこうでございます。何か犯罪を私が誘導するようでぐあい悪いのでございますが、それは積極的に、真剣に消費者の利益を守るという見地に立って厳格なる態度で捜査をいたします。


○亀田得治君 じゃもう一つ。あとのほうは非常に積極性があってよろしい、あとのほうは。前のほうですね。これは法務大臣なり刑事局長の一つの見解にすぎないと私は思うのです。しかし、納得しない者が、これはやはり不正競争防止法の五条にも該当するという立場で、刑事訴訟法上の手続きをとれば、これもひとつ積極的に取り組んでいただけますか。被害者と思われる方が、われわれが言うような解釈で、これはやはり罰則違反だという立場をとってやった場合、それは法務大臣なり局長の言うのは一つの見解だから、これは私は検事によってはそれはもうわれわれが言うような解釈をとる人もおるし、裁判官もおそらくそういう人もおると思う。だから、そういう性格のものですから、告訴、告発等があれば、不正競争防止法の五条についても積極的に取り組むということはどうですか。こっちが手続した場合。


○国務大臣(田中伊三次君) その場合も、申し上げるまでもなく、先ほど申し上げました積極的態度で、これを厳格なる態度で捜査をいたします。ただ、そのいまおことばの中に、ちょっと私は誤解を招くように思うので申し上げるのでございますが、お前の一つの見解だろう――なるほど私の一つの見解でございます。そういう見解でございますが、これは非常にこの情、憎くむべき事情にありますね、この本件の問題は。そういう事情にあるからといって、現行法の不正競争防止法第五条なる条文を適当に解釈をして、あくまでも厳罰にするのだという態度は、近代国家のとっております罪刑法定主義の原則にそむくものである。それはやはり法律を変えてやるべきものだ。どうしてもやはり解釈は――法律の精神の解釈は厳格にしなければならぬ。それを曲げてやっちまえという、そういう意味の捜査等ですね、そんなことを仰せになっておるわけじゃございますまいが、そう仰せになっておらぬのならば言うことはないのであります。(笑声)ぼくが言うとみなすぐ笑うからね。それでどうぞそういうふうに告訴告発があります場合、投書がありますような場合、これに対しては厳格なる態度で捜査をして、消費者の立場を考えるということはもう間違いございません。


○鈴木強君 そうすると、法律の不備な点は大臣もお認めになっているのですね。したがって、その実情に合うようなきびしい改正をすべきだと思うのですが、その点どうです。


○国務大臣(田中伊三次君) 私はどうもときどき要らぬことを言うくせがあります。この問題は担当は厚生省です。厚生省が閣議に提出をして、腹をきめて、こういう理由であるから、この取り締まりを緩和するためにこういう改正をしたいということを言うべき筋のものだと思います。それを法務省がここで答えをするということはまた行き過ぎておるということになりますので、どうぞこの話は厚生省にお聞きください。


○鈴木強君 いや、あなたがそういう不備なことを認ておられるからね。ですから、やはりその点はあなたの考え方を聞きたかったのですね。厚生大臣からも聞きます。


○国務大臣(坊秀男君) この問題は、厚生省といたしましては、先ほど鈴木さんもお認めになっていらっしゃるこの七百二十ミリリットルでないほうの大小幾つかのびんに入っております中身ですね、この中身につきまして厚生省がこれを調査いたしまして、そうしてこれにはビタミンC、これを強化しておるということで栄養改善法上の厚生省がこれを認めたというようなものでございまして、本物のポッカレモンといいますものについては、これについては別にどうということはないのだというお話でございます。ところが、非常に悪質なメーカーがあたかもそれとまぎらわしきようなものを――全く別個のものでございます、いまそこにあります七百二十ミリリットルびん入りのものは。全く別個のものを、これを表示等につきまして、これは抜け道がちゃんとつくってあります。ビタミンC強化などという文字は一つも入れていない。その他は大体同じような図柄でもってやっておる。そういうようなことでもって、しかも本物のポッカレモンと同じように並べて、そうしてこれを広告しておるというようなことでございまして、そこで、まことに私はこれは憎んでも余りあるメーカーのやり方だと思います。ちゃんと抜け道を考えまして、そうして本物でない全く別個のものを本物であるかのごとく装って、そうしてこれを販売しておるというこの行為は、私はそれは指弾されるべきものであるというようなことから考えまして、決して私は責任を逃げるわけでも何でもございません。私はそういったような、まるっきり別個のものを本物とまぎらわしいようなかっこうでそれを市販する、補給するといったようなことのできるというようなことにつきましては、これは表示を、たとえば本物のビタミンC強化というような文字でもまるっきり小さく書いてあるものでございまするから、そこでうそのものにそれが書いてなくとも、本物とうそのものとの見分けがつかないといったようなことをやっておる。しかも広告はもう並べてやっておる。さようなことにつきましては、これは厚生省といたしましても、そういうようなことはないように私はつとめていかなければならないと思っておりまするけれども、今度ポッカレモンのメーカーのやった行為というものは全くこれは、確かにそれはビタミンC強化ということを認めたのは厚生省でございますけれども、さような行為を厚生省は断じて認めていないし、これはその行為に対してどういう処分をするか、処理をするかということは、これは別途厚生省もむろん協力もいたしますし、これは別途に考えていかなければならない問題だろうと私は考えております。


○鈴木強君 法律の条文を改正しないのですか。


○国務大臣(坊秀男君) その法律の改正ということにつきましては、いま田中法務大樹からこれは厚生省の問題だと、こういうお話がございましたが、まあここに端を発したのは、厚生省がビタミンCというものの強化を認めた飲料を、これを認めたことによりますけれども、しかしそのことによって市販をされて、まぎらわしいようなやり方をやったということにつきましては、これは関係各省その他のところとよく相談をいたさないことには、厚生省としては結論はつけられないと、こういうことでございます。


○政府委員(北島武雄君) 栄養改善法とかあるいは不正競争防止法、さらに刑法あるいは軽犯罪法、こういう問題につきましては、先ほど法務省あるいは厚生省の当局から御説明がございました。私のほうといたしましては、不当景品及び不当表示防止法の明らかに禁止いたしております不当表示に入るものと少なくとも私どもは解釈いたします。不正競争防止法と非常に似た点があるわけでございますが、不当表示防止法の第四条の不当な表示の禁止は不正競争防止法よりもさらに広く規定されておりまして、本件につきましては、この第一号の商品の「品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」、これにはまさしくどんぴしゃりで入ると考えております。このような一般消費者を誤認せしめるようなああいう誇大広告は、私どもといたしましては断然取り締まらなければならない。お話の問題のレモンにつきましても、すでに調査は完了いたしておりますが、さらにこれに引き続きまして類似な不当表示を行なっておるレモンもございますので、あわせてただいま調査いたしておりまして、調査完了の上は適当な排除措置を講じたいと、こう考えておるわけでございます。


○鈴木強君 厚生大臣、あなたは、法律上の不備な点もあるわけですから、そういう点で関係の皆さんと相談する点もわかります、私も。あなたはここで厚生大臣としていまこういう問題にぶつかってみて、法律を是正する必要を感じているのでしょう、そういうことを聞いておるのです。そうしなければだめですよ。


○国務大臣(坊秀男君) その本物については、厚生省がこれは確かにビタミンCを強化しておるということでこれを認定いたしまして、そういうふうに売らせておる。そうすると、そのメーカーが非常な悪質なやつでございまして、いかにもしろうとが見れば、これを消費者が見れば、それと同じような見間違えるといったようなものをこれを売っておる。ところが、それはまさに厚生省が認定したものとは別個のものでございましょう。その別個のものをまるで同じように、見違えるように、誤るようにしてやったその行為が私は非常によろしくないと、で、そういったような行為について直接厚生省はストレートにこれを取り締まるとか、そういったような厚生省の機能ではございません。さような意味におきまして、端を発したことは、確かにビタミンC強化というものを認定したことは厚生省でございますけれども、もしもビタミンC強化というようなことを認定していなかったらば、それはこういう事態が私は生じていないと思いますけれども、そのビタミンC強化ということを認定いたしましたのは厚生省の、これは何といいますか、所管事項としてやったことでございます。だけれども、それに似たようなまぎらわしいものを、これを市販した、その行為については、これはどうも直接厚生省が直ちにこれに対して取り締まるとか、あるいはどうとかいうことはこれはできない立場でございますので、これが詐欺罪に該当するか、あるいはほかの罪状に該当するかどうかといったようなことは、これは私はほんとうにそういうような行為は、私は、そういったような犯罪に該当して、これは、私の感情といたしましても、また消費者の立場といたしましても、これは処分されるべき行為だと思いますけれども、これについて厚生大臣がしからばこれは率先してそうして刑法の改正とか、あるいはその他の法律の改正というようなことにつきましては、私がこれをリードしてまいる、発言してまいるといったような立場では私はなかろうと思うのでございます。しかしながら、かかる事態はどうしても、これは今後再びあってはならない。さような意味におきましては、もし法律に欠陥があるということであるならば、その法律の是正ということに進めてまいらなければなりませんけれども、ほんとうにこれは法律の欠陥であるか、あるいはその他社会情勢、いろいろなことがございましょうが、そういった広い角度からこれはながめてまいらなければならない、かように私は考えます。


○鈴木強君 あの、この認可の基準について、これは非常に問題がある。私は、これは時間がありませんので非常に残念ですけれども、これは非常に問題がある。そこで、まあちょっとこの大びんの七百二十ミリのものは、いつから発売したかということを……。


○政府委員(中原龍之助君) このいわゆるポッカレモンですが、強化したものではございませんが、これが発売されましたのは、昭和三十二年でございます。


○鈴木強君 現在まで何本生産していますか。わかっていますか、強化したものもしないものも合わせて。


○政府委員(中原龍之助君) 七百二十ミリのものは、私聞きましたところでは、約六百四十万本ぐらい出ておるというふうに聞いております。


○鈴木強君 厚生省が認可をいたした特殊栄養食品として認可したのは、いつなのですか。


○政府委員(中原龍之助君) 最初に認可を、特殊栄養食品として認可いたしましたのは、昭和三十七年の六月五日でございます。


○鈴木強君 そうすると、その認可してから現在までの大びんの数はわかっていますか。


○政府委員(中原龍之助君) 認可してからの大びんの数はちょっとただいま承知しておりません。


○鈴木強君 この前のあなたの御発言ですと、行政指導の面で製造出荷を中止させたということでしたが、その大体出荷はどのくらい、どの程度回収されたのか、それを。


○政府委員(中原龍之助君) 私ども尋ねまして承知しておりますのは、回収の状況でございます。それは四月十四日以降五月十八日までに、約三万二千本を自発的に回収し、なお残りの回収に全力をあげておるということでございますが、大体市場にあるのが八万五千本ぐらいある。そうしますと、ただいままで約四〇%が回収された。それから工場には、四月十四日現在、工場の中にあるものが約八万本あるというふうに聞いております。


○鈴木強君 これは正確に調べられないのですかね。


○政府委員(中原龍之助君) このものは私ども行政指導としていろいろ調べておるわけであります。いわゆる許可されたビタミンCポッカレモンとして違反があるならば、これを行政的にできますけれども、これは普通の飲料水でございますので、そういう意味で、いわゆる強制的に調べるということはなかなかむずかしいかと思います。しかしながら、行政的に指導をしていくといういろいろの責任もございますので、そういう意味で工場のほうにいろいろ聞いて調べさせたわけでございます。


○鈴木強君 農林省ですかね、農林省いないですか。――それはあとでまた触れます。
 それから四月二十三日以降にビタミンCを強化したものを、こういうものと同じようなものを売り出した、それはほんとうでしょうか、別につくって……。


○政府委員(中原龍之助君) 私聞いております、四月二十三日以降、正規の、いわゆる特殊栄養食品であるものを七百二十ミリでつくっている、つくりつつあるということを聞いております。


○鈴木強君 まだ出荷はしていないのですか。


○政府委員(中原龍之助君) 出荷されつつあるそうでございます。


○鈴木強君 そうなりますと、これと強化されたものとがごっちゃごちゃになってしまって、これはまことに国民は迷惑します、消費者は。いまはまだ、けさ、参議院の会館の下の売店がありますがね、あそこにこれと同じ入っているのが売ってありますね。行政指導をやるなら、もう少してきぱきとやったらどうです。これは非常に困る問題ですよ。どうしますか。


○政府委員(中原龍之助君) そのように業者にも申し入れているわけでございます。


○鈴木強君 公取の委員長、あれですか、排除命令はもう出せるのではないですか。そのほかのやっとあわせて進捗状況を……。


○政府委員(北島武雄君) 一社に引き続きまして残りの三社、十八日に聴聞手続をいたしました。これはやはり不当表示の疑い十分でございます。なお、つけまして、そのあと六社ただいま調査中でございますが、これはおそらくは不当表示の疑い十分であるとこう考えますので、あわせて排除いたしたい、こう考えております。


○鈴木強君 ポッカのほうはいつごろになるのですか。


○政府委員(北島武雄君) 近々排除命令が出ることになる模様であります。ただ、レモン界の業界といたしましては、たとえばあるレモン会社が一つだけ排除を受けますと、その間にまた自分のところはいいんだということを表示する危険が多分にございます。そういうことも私ども聞いておりますので、そういうものもあわせて排除いたさないとこれはさらに一般大衆に誤認せしめることになると、こう考えておりますので、あわせまして近々排除したい、こう考えております。


○亀田得治君 関連。ちょっと公取委員長、そんなあわせてやる必要ないですよ。わかったものからどんどん何回でもいいから出していったらいいですよ。あわせるというようなことを考えるものだから、ほかの要素が入ってきて……。そんなことを考える必要はないですよ。それと、それから六社と言われましたが、けさ私もある人から電話をいただいたわけですが、これはもう広範に行なわれておる。六社とか、そんな限定されたものじゃないようですね、この種のことが、レモン関係で。そういう点、公取のほうではどういうふうに理解していますか。


○政府委員(北島武雄君) これは、おそらくただいま調査している数社というようなことではないと私ども思っております。ただいま調査いたしておりますのは、業界のほとんど圧倒的な力を占めているものでございます。あとは、これは場合によりまして公正競争規約などによりまして自粛の措置を講ぜしめる、これによってある程度目的を達するのではなかろうか。一つ一つとにかく全部まとまってからやるということではございませんで、おもだったものは少なくとも一緒にやらないと、その間に抜けがけをしようと、こういう機運もございますので、こういうものはやはり思わしくないということでございます。近々排除命令は出すつもりでございます。

 

 

 

 

 


 

 

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