【暮しの手帖】宅配便をテストする(1983年) 輸送事故 [生活の知恵]
暮しの手帖で特集された宅配便のテスト記事 宅急便のテスト
ギターを宅配便で送るのに、おすすめの業者は?
輸送事故で割れたギター
以前、定価20万円の高級ギターを宅配便で移送する際、いつもと違う業者を使ったところ、手荒に扱われてしまったためにギターの底部が割れてしまったことがあります。
ふだんはヤマト運輸の「ヤマト便」で保険をかけて送っています。
この時は他の人が発送手続きをしたために、別の業者で送ってしまったものです。
いやはや、油断しました・・・
幸い、全額輸送業者持ちで修理していただいたのですが、貴重品を送る場合は輸送業者の選択に注意が必要だとつくづく感じた出来事でした。
この輸送事故で思い出したのが、昔の暮しの手帖の記事にあった「宅配便をテストする(1983年)」。
図書館でバックナンバーを借りて、当時の記事をチェックしてみました。
「宅配便をテストする」(1983年4月 第83号)
対象は、郵便小包(郵政省)、宅配鉄道便(日本国有鉄道)、ペリカン便(日本通運)、フットワーク(全日本流通)、宅急便クロネコ(ヤマト運輸)、カンガルー宅配便(西濃運輸)
当時はまだ佐川急便がなかったようです。
暮しの手帖の定番は家電製品や生活用品のテストですが、本号ではこの頃に急激に普及が始まった「宅配便」をテストするというもの。
当時の私は小学4年生でしたが、強く印象に残った記事です。
宅配便の取り扱い個数の推移
1980年を過ぎた頃から、ものすごい勢いで宅配便の取り扱い荷物量が増加し、それとともに従来から荷物輸送を行なっていた郵便と国鉄が急激に下がっています。
1982年の時点で宅配便の取り扱い個数は1億5千万個を超えました。
では、それから30年が経過した現在(2012年)ではいくつかしら・・・と思って調べたところ、平成22年(2010年)は32億1983万個でした。(平成22年度宅配便等取扱実績関係資料)
この資料には、1984年からの取扱量推移のグラフがあります。
1984年の取り扱いは3億8450万個となっていますので、1982年→1984年の2年間で倍増し、現在ではさらにその10倍の市場規模になったことがわかります。すごい伸びですね!
茶わんが割れた割合。郵便が約50%と突出して悪い成績。
記事のハイライトは、いろいろな荷物を異なる場所から送って、業者間の輸送日数や中身の破損状況を比較しているところ。
荷物の種類は、「茶わんと皿(茶わんは新聞紙でしっかりと包装)」「米」「トイレットペーパー」 「雑誌」など。
輸送区間は、都内、福島〜東京、吹田→福島、大垣→吹田など。
国鉄では、こわれものを送る場合は割増料金を払わないといけないのですが、それだと宅配便と料金面で大きな差が開いてしまい、比較とならないため、あえて普通便の扱いで茶わんと皿を発送したために成績が悪くなっています。
郵便局では、「 こわれもの」と箱に書いても消されたり、局員から「こわれますよ、いいですか?」と言われて、それを伝えた旨の印を箱に押されるなど、はじめから壊れることが当たり前だという状況。それを反映して、茶わんの割れも多く、突出して悪い成績でした。
郵便で成績が悪い理由は、途中の中継局でベルトコンベアーを使って上から落とすように仕分けしていることが原因のようです。
一方、成績の良かったヤマト運輸などの宅配便は、手渡しなど荷物が傷つかないように積み替えや横持ちをしていることが輸送事故の低減に寄与しています。
「改善してほしい 郵便と国鉄」
暮しの手帖の商品テスト まとめ記事
まとめの記事では、郵便と国鉄に対して強く改善を要望しています。一方、輸送日数および輸送事故の点でバランスよく良い成績を収めたヤマト運輸の宅急便が評価されています。
<記事の要約>
・テスト内容
8種類の荷物を輸送。(暮しの手帖、米、トイレットペーパー、茶碗、皿など)
・送付先&テスト時期
近距離および遠距離を比較。(東京〜福島、東京〜大阪、東京→大垣→大阪、吹田→福島)
通常の荷動きの11月、1月と荷物の殺到する12月中旬の3つの時期にテスト。
・出荷方法
「集荷」と「持ち込み」
→国鉄は紐をかけて荷札をかけなくてはならない。郵便は紐をかけなくても良いと言われたが、実際には半分近くのケースでその場でヒモをかけさせられるか局の人がヒモをかけていて、統一されていない。
郵便と国鉄は荷物に直接送付先を大書きしなくてはならない。
・・・昔は荷物にヒモをかけるのが必須だったんですね。
・運賃
郵便は重量によって細かく決められており、重量が軽ければ安くなる。他社は競争が激しいこともあり、だいたい同じような料金。
・どんなものでも送れるか
郵便局では、ほどんどが「こわれますよ、いいですね」「投げたりしますから他の方法で送ったら」と注意され、こちらが書いていった「こわれもの」という字をわざわざマジックで消したり、「包装注意済」という印を押されたりする。国鉄はこわれものに対して割増運賃を取られて倍近い運賃になってしまうので、通常の料金で送付した。
・荷物を送るのに要する期間
東京〜大阪間は1日〜2日で大きな開きはないが、吹田→福島では郵便以外は2日前後だったのに対し、郵便は6日を要した。
・12月の忙しい時期の影響
いちばん遅れが目立ったのはペリカン便。次が国鉄。遅れが少ないのはヤマト。
・茶わんは割れなったか
皿は一枚も割れなかったが、茶わんはどの業者でも割れが発生。ただし、カンガルー、クロネコヤマト、フットワークは2%、ペリカン便は6%だが、国鉄は14%、郵便は50%。郵便は受付時に「割れますよ」と言われた通りの結果となった。郵便と国鉄は荷物の傷みが激しい。
・壊れた荷物の補償
郵便や国鉄ははじめに割増運賃を払わないと、いっさいの補償はなし。また、郵便小包には受取りとか送り状がないため、出荷したという証拠がなく、出した荷物が届かなくて催促しても確認できない。一方、宅配便は必ず伝票の控えをくれるので、万が一の時でもすぐに調べられる。
・改善して欲しい 郵便と国鉄
全体を通して、ムラなく好成績だったのはヤマトでした。
<輸送事故時の問い合わせ>
・日本郵便
郵便物等が「汚れていた・ぬれていた・壊れていた」が損害賠償できますか?
・ 佐川急便
・ ヤマト運輸
<関連サイト>
<当ブログ内関連記事>
・ 【レビュー】『暮しの手帖と花森安治』をめぐる3冊 ┃ 暮らしの手帳
・ 【暮しの手帖】『愚劣な食器洗い機』主婦をあまく見てはいけない(花森安治)1968年
・ 【暮しの手帖:告発記事】「ポッカレモンとビタミンC」(1967年 第一世紀89号)
・ 【暮しの手帖】『焼いた食パン4万3千88枚』 - 自動トースターをテストする -(1969年)
・ 【ミシン】1万メートル縫えますか? ~『暮しの手帖』電気ミシンの商品テスト~(1964年夏号)
・ 【暮しの手帖】 『ジグザグミシンは役に立つか』 直線ミシンの良さを強調した記事(1972年)
<Amazon>
宅配便のシステムを知るための一冊。ヤマト運輸の配送システム:集荷〜センター(発送)〜ベース(発送)〜幹線輸送〜ベース(到着)〜センター(到着)〜配送
ヤマト運輸の宅急便がどのような考えに基づいてシステム化されたのか、経営者の小倉昌男氏によってまとめられた本。宅配便が発達する以前のシステムがいかに貧弱だったのか、そのシステムを反面教師として今の宅急便のシステムが構築されていった様子がよく分かる一冊。