【レポート】エアカウンターS(エステー)の放射線量感度チェック[レビュー] [福島原発事故関連]
エアーカウンター エステーから実売価格6000円台の空間線量測定器「エアカウンターS」発売!
エアカウンターSの大きさは太いマジックぐらい。気軽に持ち運び出来るサイズ。
我が家は福島県の浜通り(太平洋沿い)にあり、福島第一原発から40km離れています。
昨年夏の時点で、自宅周辺の線量は0.3μSV/h前後。除染作業により、今は0.15μSV/h程度まで下がりました。
東日本大震災に伴う福島第1原発の放射能漏れ事故直後、政府・自治体や報道機関が放射線量についてすみやかに情報を流してくれなかったために、無用な放射線被曝をこうむったことにうんざりしたので、再び放射性物質が放出されるような事態が起きた時に備えて、自宅にも線量計が欲しいと思っていました。
ところが原発事故直後は10万円ぐらいの高いモデルしかなく、それすら売り切れていたので購入を諦めていました。
2011年10月20日にエステーから1万円台(希望小売価格15,750円)の空間線量計「エアカウンター」が発売されたので、値段が落ち着いたら買おう・・・と思っていたところ、従来品よりも価格が安く(定価7900円)、かつ測定感度が向上し、さらにペンタイプで持ち運びしやすい新モデル「エアカウンターS」を2012年2月上旬に発売するとニュースリリースが。
ネット上では発売前から予約を受け付けていたので、Amazonで1月中旬に注文。
初代の「たまごっち型」タイプと比べ測定終了までの時間が短くなり、さらに測定値が確定した後も測定続けるように改良されました。さらに初代と比べて持ちやすく、液晶表示が太字で見やすくなっています。
昨年秋に発売されたエアカウンターは、品不足で価格が高騰し、ネット通販では定価を上回る価格で取引されていたようですが、「エアカウンターS」は発売前の予約の時点ですでに定価より1000円以上安い6300円台の割引価格が提示されていてビックリ! エアーカウンターS エアー・カウンターS エア・カウンターS
福島県南相馬市原町区に住む両親からも1台欲しいとリクエストがあったので、納期が遅くなるリスクを考えて異なるお店に1個ずつ注文しておいたところ、どちらの店からも発売直後の2月8日に発送したと連絡があり、2月9日に我が家に到着。
エアカウンターのパッケージ。パッケージデザインは、MR_DESIGN代表のアートディレクター・佐野研二郎氏が担
我が家で「エアカウンターS」を購入した目的は、以下の2つ。
1.自宅周辺の線量値とホットスポットの場所を調べたい。
2.放射能漏れ事故で自宅周辺の空間線量が急上昇した際に、アラームで察知したい。
(→子どもたちに安定ヨウ素剤を服用させるタイミングを知りたい。)
注記:残念ながら、「エアカウンターS」では食品や水に含まれる放射性物質の濃度を測定することはできません。(説明書にも記載されています。)
家庭用放射線測定器【エアカウンターS】の特徴 ・使いやすい:片手で使えるスティックタイプ ・見やすい:シンプル液晶で数値がわかりやすい ・分かりやすい:放射線を検知すると音が鳴ります 総合企画・開発プロデュース 株式会社タカラトミーアーツ
◎ 「エアカウンターS」と堀場製作所「Radi AP-1000」の測定精度を比較
エアカウンターSは価格が従来発売されていた線量計と比較してかなり安価。
「測定精度は大丈夫なのかしら・・・?」と思ったので、空間線量測定器として実績のある堀場製作所製「Radi PA-1000」を借りて測定数値を比較してみました。
Radiは定価15万円(実売10万円程度)なので、エアカウンターSの10倍以上の価格です。
エアカウンターSの製造ロット番号
今回は2本のエアカウンターを別々の店で注文したので、製造ロット番号はかなり違うものでした。
エアカウンターSの使用方法 1.まず地表から1m離して水平に構えます。2.本体横のスライドスイッチをONにします。3.数字のカウントダウンを開始。35秒後から予測数値が表示されます。4.ランプ点滅中は、予測測定中。ランプが消灯すると、確定値が表示されます。SOUNDボタンを押すとガンマ線を検知した際に「ピッ」と音が鳴ります。音はかなり控えめ。エアカウンターSもRadiもリセットしてから35秒経過すると予測数値の表示が始まる設定。約2分後に表示された数字はいずれも 0.18〜0.19μSV/h とに大きな違いはなく、測定精度は十分なようです。
(下の動画をご覧ください。)技術情報 エアカウンターSのγ線検出原理 エアカウンターSの放射線検出部はシリコン半導体(フォトダイオード(PD))を使用。原理①シリコン半導体に入射した放射線とシリコン原子の相互作用で電子正孔対が発生。②電子正孔対は電圧を印加することでパルスとして検出される。③パルスとしてガンマ線を検出し、時間あたりの個数を算出。④単位時間あたりの検出個数に137Cs(セシウム)を基準とした係数を乗じて、1cm線量等量率(μSV/h)を表示。
いわき市内では、当初アルファ通信が受託したモニタリングポストが設置されていました。ところがこのモニタリングポストには問題があったようで、最近ではNEC製と富士電機製のモニタリングポストが設置されています。これらのモニタリングポストは京セラ製の太陽電池パネルとセットになっていて、赤いLEDライトで常に数値が表示されています。アルファ通信のモニタリングポストは小さな液晶表示で明かりを当てないと数字が分からないものだったので、新しい装置は遠くからでもよく見えて便利です。アルファ通信製のモニタリングポストも順次更新されているようです。文部科学省
◎ モニタリングポストとエアカウンターSの数値比較
もうひとつ確認したかったのは、放射線量の高い「ホットスポット」の測定が可能かどうか、という点。
自宅近くにある線量の高い場所に線量計をかざして測定してみました。
福島県内の避難区域の見直し(2012年4月)◆警戒区域(浪江町、双葉町、大熊町、富岡町の福島第一原発から20km以内の地域)と計画的避難区域(飯舘村、川俣町の一部、葛尾村)は見直し未実施。 ◆南相馬市(小高区)と田村市、川内村の一部は見直し実施。年間被曝量50mSV以上の地域は帰還困難区域、20〜50mSVは居住制限区域、20mSV以下は避難指示解除準備区域
室内やホットスポットなどを測定してみた印象から、測定数値の精度には問題ないと考えられます。
本来は空間線量計ですので、地面から1mの高さを測定するのが正しい使い方ですが、数値的な意味を無視して単にホットスポットの有無を調べたいのであれば、対象物の近くで測定したほうが大きな値が出るので、線量の高い部分がさらにはっきりします。
被曝線量値の年間換算 0.5mSV/年=0.06μSV/h 1mSV/年=0.11μSV/h 2mSV/年=0.23μSV/h 5mSV/年=0.57μSV/h 10mSV/年=1.14μSV/h 20mSV/年=2.28μSV/h 国の基準では、年間1mSV/年以下を目指して除染を実施する。
◎ エアカウンターSで放射性物質漏れ事故を察知できるか?
エアカウンターSがあれば、東日本大震災直後に我が家の周辺に流れてきたような放射性物質を含む風の有無を間違いなく検知できると考えています。
この点を確認するため、福島第一原発事故直後の福島県内各地の線量値を調べてみました。
福島県のHPには東日本大震災以来測定した各地の放射線量の数値が掲載されています。この数字をグラフにしてみると、放射線量が短時間のうちに急上昇することが分かります。
ところが、地元自治体からは空間線量の上昇に関するアナウンスは全くありませんでした。
その頃は、がれきの片付けをしたり、断水のために給水車の前に並んでいたり、スーパーの開店待ちをしていたり、ガソリンスタンド待ちの列の車内にいたり・・・と屋外にいる人が多かったのですが。。。
例えば、福島県浜通りのいわき市と南相馬市の放射線漏れ事故直後の数値変動はこんな感じです。
南相馬市では、震災翌日の3月12日の午後6時〜8時の間に最大20μSV/hまで急激に放射線量が増加しています。
これだけ大きな放射線量の数値上昇があれば、放射線の誤差が多少あっても「エアカウンターS」ですぐに感知することができるはず。(検証実験はできませんが・・・)
エアカウンターSの測定範囲は「0.05μSv/h~9.99μSv/h」ですので、上のグラフで線量の高い時間帯では測定限界以上の数値になってしまいます。
参考までに、3月11日〜3月31日までの福島県内各地の放射線量推移は以下のとおりです。
◎ エアカウンターSは国産品(福島県で製造!)
エステーのHPにあるエアカウンターSの仕様をみると、製造は「月電工業株式会社」と書かれています。この会社は福島県福島市に本社があり、福島県北部中通り地方に工場を持つ電子機器基板及び電子機器製品組立会社でした。
地震や風評被害の影響で仕事の減っている福島県民にとって、ありがたい限りです!
わたしは福島県在住ですので、福島産のエアカウンターSを購入したということは、まさに「地産地消」ということになりますね。
純国産の機器の生産ラインを急いで立ち上げて、さらに人件費の高い日本で生産しているにもかかわらず、6000円を切るの価格で提供しているということは、エステーさんは製造原価にちょっと利益を乗せたぐらいの状況ではないでしょうか。
エステーの鈴木喬社長をはじめ、エステーの社員に感謝したいです。
発売前に予約した時点で最安相場は 6300円台 でしたが、発売から一週間の時点で最安値は 6000円 を切ってしまいました。。。
喬社長の気概に感謝したいと思います。
月電工業株式会社 福島工場 福島県福島市方木田字吉ノ内55-1 月舘工場 福島県伊達市月舘町御代田字月崎1-1 船引工場 福島県田村市船引町今泉字台ノ前126-2 さくら工場 福島県福島市さくら2丁目1-2
<関連サイト>
・エアカウンター関連
・ 月電工業株式会社(エアカウンターS製造元)
・ タカラトミーアーツ(エアカウンターS開発元)
・ 株式会社エックスレイプレシジョン(技術提供元)
→エアカウンターSの技術提供元の会社。当ブログで比較とした堀場製作所製のRadiがこの会社の商品紹介にあるので、Radiにもこの会社の技術が使われているのかもしれません。 エアカウンターSとRadiはどちらも35秒間待機してから数値が表示されます。
・ 7,900円の低価格を実現したスティック形状の新製品
入手しやすい放射線測定器 エステー「エアカウンターS」レビュー (価格.com)
◎エアカウンターの開発物語
「個人向け放射線量計『エアカウンター』の開発(第一回)」が連載されています。 地震発生直後の2011年3月にエステー社長兼会長の鈴木喬氏がトップダウンで決断して発売に向けて開発を始めた様子が紹介されています。
記事中の写真にある最初の企画書の日付が「2011年4月18日」であることから、地震後一ヶ月経過時点で、すでに具体的な計画がかたまっていたことがうかがえます。
「確かに、放射線量計を出すことは会社としてリスクもあるし、コストがどれぐらい掛かるかも分からない。数も売れないかもしれない。でも、少しでも世の中のためにはなるだろう?」(鈴木社長) (日経エレクトロニクス 2012年3月5日号 P.81)
第三回目の記事(2012年4月2日号)では、「エアカウンターS」がもともとはタカラトミーアーツで開発されていた商品であること、エステーの鈴木喬社長とタカラトミーアーツの佐藤慶太社長との話し合いの結果、開発元がタカラトミーアーツ、総販売元がエステーになることが決まったことが明かされています。
この決断に至った理由は、ふたりとも「消費者の放射線への不安を解消するために、一刻も早く安い放射線量計を世に出したい」と本気で考えていたからだそうです。
第四回目の記事(2012年4月16日号)では、最初に発売された「エアカウンター」と「エアカウンターS」との価格差を縮めるため、すでに完成していた「エアカウンター」の中国での生産ラインを止めて日本での生産に切り替えたこと、エアカウンターが利益度外視(赤字になることを承知で)で価格を切り下げて発売したことが紹介されています。
2011年度は品不足になってしまいましたが、その理由は1台あたりの校正の時間が最低でも5分かかるためだとか。
ちなみに、2012年3月末時点でのエアカウンター(初代)の出荷台数が7万7000台、エアカウンターSは14万8000台。さらに、次の世代のエアカウンターも開発中であることが明かされています。どんな商品が出てくるのか、楽しみですね
エステーによる線量計開発の記事 エステーR&D部門 商品開発グループ 第一チーム ガイガーカウンターの原理は、放射線による気体の電離作用を使って測ること。ガイガーカウンターは、ガイガー・ミューラー管という真空管を使うため、量産には向かない。シンチレーション方式は、放射線を受けると発光するシンチレータの発光をフォトダイオードで観測する。
線量計に関する記事
線量計の種類 エステー化学から発売されている「エアカウンター」のセンサーは、シリコン(Si)半導体(フォトダイオード(PD))方式を採用。他のセンサー種類として、PINフォトダイオード方式(ポケットガイガーKITなど)、GMT(ガイガーミューラー管)方式、さらに高価な検出器にはシンチレーション式検出器が用いられています。
・ 福島県内に設置されているモニタリングポストの数値(文部科学省)
福島県内2700ヶ所に設置されたモニタリングポストの数値を確認できるサイト。 10分毎に数値が記録されています。モニタリングポストの数値のグラフ・警戒区域内の数字もあり。福島県相双地区 南相馬市原町区小高区 浪江町 双葉町 大熊町 富岡町 川内村 飯舘村 広野町 楢葉町 いわき市 葛尾村 三春町 小野町 郡山市 須賀川市 二本松市 伊達市 川俣町 福島市
<当ブログ内:関連記事>
・ 【レポート】自宅除染作業で エアカウンターS を試してみました
<Amazon>アマゾン 通販 放射線量計 販売
◎ エアカウンターS エステー エアーカウンター
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◎ エアカウンター 家庭用放射線測定器
→エステーから発売された最初のモデル
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◎ 堀場 環境放射線モニタ−(シンチレーション式) PA1000 Radi
→感度の比較で使用した線量計
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線量計:
エアカウンターに関するニュース記事◆2012年6月12日高性能機種「エアカウンターEX」を新発売 検出形式にCsIシンチレーション式を採用◆わずか30秒で誤差±15%の測定を低価格にて実現◆検出方式に、これまでのSi半導体から、より高性能の“CsIシンチレーション式”を採用◆これによってCs137の測定感度が格段に高まり、その測定時間は既存の「エアカウンターS」の最長2分に対し1/4の約30秒と測定時間を大幅に短縮。自治体や学校、教育機関、除染事業者などを対象に発売。個人向けには、8月初旬にエステーのインターネット通販で発売する予定。販売価格は税込み19,800円、月産数量は約1万個。
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