【実録】自宅の除染作業の記録(福島県浜通り地方) [福島原発事故関連]
我が家は福島第一原発から40kmほどはなれた地域にあります。
原発事故の影響で、自宅周辺では0.2〜0.3μSV/h程度の放射線量があります。
妻と子どもは福島第一原子力発電所の1号機が爆発した翌日の3月13日の朝にここを離れて半年間九州へ疎開していました。
わたしはひとり家に残っていました。
2011年夏に、家の内外の除染作業を行いました。このページでは、自宅周辺の除染活動の様子を紹介します。
◎ 自宅周辺の除染作業
まずは自宅の掃除をすることに
革手袋、土のう袋、デッキブラシ、ホースを買ってきました。デッキブラシは売り切れていたらしく、ちょうど入荷したばかりだと店員さんが言っていました。土のう袋も残りわずかだったので、地域のみんなが除染活動をやっているようです。
地元の災害支援ボランティアでがれきの撤去作業を行ったの際に支給されたマスクと防塵ゴーグルで完全装備して、作業開始!
自宅周辺は0.25~0.30μSV/h程度の線量ですが、落ち葉や土のたまるところでは数値が高くなる傾向があります。(ここでは0.607μSV/hを表示しています。)
まずこういった場所をきれいにするところから始めました。
家の前の歩道沿いも清掃。
こういう落ち葉とか土の放射線量が高いんですよね・・・
自宅周辺の低木。
伸びた葉に放射性物質が付着しているので、刈りこみを行います。
ヘッジトリマーでガンガン刈って、きれいになりました。
作業前。
作業後。スッキリしました!
たくさんゴミが出ました!
草木は生ゴミとして自治体のごみ収集車が持って行きました。
◎放水による水洗
続いて、放水による水洗。
放水時は跳ね返ったり上から落ちてくる水を浴びるので、登山用の雨ガッパを着用して作業。
玄関に放水中。
窓にも放水。
外回りの掃除が終わったら、家の中の掃除も。
食器棚の天板が汚れていたので、こすって落とします。
放射性物質を除去するためには、ぞうきんで拭いて洗って使いまわすのではなく、使い捨ての布を使って拭いた布は洗わずにそのまま捨てる方がいいそうです。
そこで、近所のスーパーが「赤ちゃんのおしりふき」を安売りするタイミングを狙ってたくさん買いこんできました。
レンジグリル、食器棚など台所を中心として、年末大掃除の時以上にきれいになりました
ベランダは線量が高くなりがちな場所なので、おしりふきをジャンジャンつかってふき掃除しました。窓のレール溝の汚れも同じく拭きとってスッキリ!
◎ 庭の表土削りは線量低減に効果あり!
除染作業はまだまだ続きます。
翌日はカーテンの洗濯と庭の表土削りを行いました。
朝一番でカーテンを洗濯。
乾いたカーテンを取り込んでから表土削りを始めます。
本格的に表土を削り取る前に、まず線量計を使って、表土除去でどれぐらい線量が下がるのかテストしてみました。
子どもたちが遊ぶ家沿いのエリア
ここのエリアの土を取り除いて除染効果があるかどうかテストします。
何もしていない状態では、地面から1cmの測定で0.25μSV/h前後の数値。
表土を5cmぐらい除去しました。さて、効果はいかに・・・?
数値が半分ぐらいまで下がりました。
放射性物質は地面の表層部分に多く残留していることが分かります。後になって福島大学で放射線の調査をしている先生とお話させて頂きましたが、やはり表層の土に放射性物質(主に放射性セシウム)が強く吸着されているようだ、と言っていました。
土を削って土のうに詰めます。
それほど広い庭ではないのに、土のう袋に詰めたらけっこうな量!
これの回収先はまだ決まっていません・・・。(仮置き場が決まるまで、役所では引きとってもらえないのです)
→後日、造園業者に芝の除去を依頼した際に有償で引き取ってもらいました。
土のう袋は日光に当たるとボロボロになってしまうので、日よけのシートをかぶせました。
先ほどの表土は0.25μSV/h程度でしたが、この土のう袋の線量はどのぐらいでしょうか?
0.98μSV/hもありました! 高い!
◎ 造園業者による表土と芝の除去
冬に入ってから、造園業者さんにお願いして庭の土と芝を撤去してもらいました。
同時に、市役所に引き取ってもらえなかった土のう袋に入れた汚染土も回収してもらいました。
放射性物質が入った土のうを撤去してもらい、スッキリ!
造園業者さんに土を削ってもらいました。
人力だとクタクタになりましたが、重機を使うと速いです!
土を削った後、レンガ片を敷き詰めました。
芝生には放射性物質が付着しているので、剥がします。
剥がす前の状態。(2011年夏)
芝を剥がし、低木を撤去した後。(2012年1月)
殺風景な庭になりました・・・
庭の除染工事の見積もり。
芝の撤去以外にも、表土除去や砂場の設置など、いろいろと工事をお願いしたので、費用は全部で15万円ぐらいかかりました。
補償金は国や県から1円も支払われていないので、すべて自己負担
元々それほど線量が高い地域ではないので、ここまで費用をかけるべきかどうか悩みましたが、大事なのは小さな子どもたちのために「何かをやった」という気持ちの問題なのではないかと考えています。
そういう意味では、除染によって線量が下がったので、かなり安心しました。
福島県 避難地域 南相馬市小高区、飯舘村、浪江町、双葉町、富岡町、楢葉町、広野町、川内村 ・3km圏内 2011年3月11日夜 即時避難指示(一時帰宅禁止)8月26日に一時帰宅許可 ・20km圏内 警戒区域 3月12日 20km圏内を避難指示区域に指定。即時退避。4月22日に警戒区域に指定。7万8000人が避難。 ・30km圏内 屋内退避区域 3月15日「放射能が人体に影響をおよぼす可能性がある」ことから、20〜30km圏内は建物から外へ出ないように指示(4月22日解除) 緊急時避難準備区域 4月22日 屋内退避区域で計画的避難区域に該当していない地域を緊急時に屋内退避が必要な地域として指定(いわき市は除外)9月30日解除 ・計画的避難区域 4月22日 放射線量が年間20ミリシーベルトに達する恐れがあり、いますぐではないが、5月末をめどに準備をして避難する地域として指定。飯舘村、浪江町津島、川俣町山木屋、葛尾村。
<関連サイト>
・ いわき市放射線量低減のためのマニュアルについて(いわき市)
・ 福島県における除染の取り組みについて(福島県HP)(PDF)
除染作業には放射線量計が必要です。除染の効果を見積ることができます。
<関連記事>
・ 【レビュー】線量計:エアカウンターS(エステー)の感度チェック
福島第一原子力発電所の爆発事故により拡散した放射性物質の除染作業の手順は、各地の自治体のホームページに除染マニュアルとして紹介されています。除染に際しては、除染の効果を確認するために、空間線量計による線量測定を行うことをおすすめします。基本的に放射性物質は拭きとることにより除去できますが、雑巾のように何度も洗って使い回しするよりも、一回ごとに拭きとって捨てるティッシュや赤ちゃんのおしりふきを使うことが望ましいです。屋外での作業では、除染作業の際に舞い上がる放射性物質を含むホコリの吸引を防ぐためにマスクを着用し、さらに帽子、ゴーグル(メガネ)、手袋、長靴を着用します。
高圧洗浄機を用いる場合はしぶきが飛び散るので、雨合羽(カッパ)を着た方が好ましいです。作業内容は、草刈り、洗浄(水洗、ふき取り)、清掃、表土剥ぎ、剪定(刈込み)、草刈り、土砂のかき取り、落ち葉集め、屋根や雨樋の洗浄、高圧洗浄機による洗浄などです。活動は除染アドバイザーの資格を持つ方の指示に従い、個人、地域単位での活動、ボランティアとの協力による活動があります。集めた落ち葉、草木、土砂は自治体の指示に従って保管および処分します。土壌は土のう袋に入れてビニール袋やブルーシートをかけた状態で公園や広場などの仮置き場に集めた後、最終処分場が決まるまで保管します。重機により地面に穴を掘って遮水シートで覆った場所に埋めることもあります。市役所や役場、公共施設、通学路が優先的に除染の対象となります。