【実録】地域の通学路除染活動(福島県) [福島原発事故関連]
ブログ記事:福島県内における除染活動の実情を紹介します。
2011年9月中旬に、地域の自治会から通学路の除染作業実施について説明がありました。
自治会の通学路除染活動には、最大50万円までの助成金が支給されます。ただし、支給要件として「地域の市民活動として必ず地域の住民が活動に参加すること」「除染の前後で同一地点の数値を比較すること」などが伝えられています。
要するに、業者に全部やってもらうというのはダメですよ、ということですね・・・
「除染活動をやってください」と言われても、これまではそんな経験がなく、すべて手探り。
自分たちの住む地区は「できるかぎり早く除染を行なって、子どもたちを守りたい」という区長さんからの強い希望もあり、他地区に先駆けて除染に向けた活動を開始。
9月の自治会会合で、10月中旬の秋の市民清掃の後に、そのまま続けて地区有志の方に通学路の除染活動に参加してもらうことになりました。
何度か話し合いを経て決まった除染の方針は次の通り。
1.線量の高い場所を特定(事前に通学路全体の線量測定を実施)
2.除草と剪定を実施(樹木については、造園業者に刈ってもらう)
3.高圧洗浄機によるアスファルト歩道の洗浄を実施
さらに、支給された補助金を使って、清掃用の道具を買い揃えました。
除染活動前の測定では、アスファルト歩道から流れた水が染み込む土の部分、雨水がたまる排水口の入り口付近の土砂、桜の木の下など木や草が茂っている部分のそばの線量が高くなることが分かりました。
いよいよ除染活動の当日。100名近い方が集まりました。
周囲の線量が高いので切られてしまった桜の木。
桜切るバカ・・・と言いますが、放射線量を下げるためには仕方ありません
歩道沿いの土砂が堆積しているエリアは、周辺の倍以上の放射線量の数値を示していました。みんなで長年たまった泥をかきとります。
きれいになりました。
線量の数値は、0.57μSV/h→0.22μSV/hまで下がりました。
予想していたよりハードな作業で、クタクタになりました・・・
除草後に高圧洗浄機で除染。
高圧洗浄機はレンタル品。
地域で除染したおかげで、通学路はピカピカになりました!
一週間後、息子と除染後の通学路の線量調査を行いました。
1mの高さの線量値を測定中。
地面にある怪しげな模様は、高圧洗浄機のジェット水流で削られた跡。
各測定地点において、地面から ①1cm、②50cm、③1m の3つの高さの数値を測定します。
通常は地面に近づくほど数値が高くなります。
この道沿いの区間は、除染活動前は①の「地面に近い部分」の数値が一番高かったのですが、除染後は逆に地面の数値が一番低くなりました。
一方で、地面から高い②、③の数字はほとんど変わりません。
あれだけ苦労して除染活動したのに・・・残念です
おそらく、地面近くは高圧洗浄機によってきれいになったので線量の数値が下がったのですが、1mぐらいの高さだと周辺の木々から降り注ぐ放射線の影響が大きくなるのでは・・・と仮説をたててみました。
「じゃあ、除染した歩道のすぐそばにある公園の木のあたりを測定してみたらどうかな~」と息子が提案。
さっそく測定してみたところ、予想した通りに高い数値が。
(周辺の木々は0.5μSV/h強、一方の地面近くは0.20~0.25μSV/h)
つまり、除染によって線量値を下げようと思うのであれば、周囲にある放射線の発生源をすべて撤去しないと効果が無いことになります。
バッサリ刈り取られたツツジ。
「学校の近くの歩道の真ん中にあるポールにつまづいて転んだ」と息子が言っていたので、「何で道路の真ん中にポールが置いてあるんだろう?」ということで、調べてみることにしました。
怪しげな道路の割れ目を測定すると・・・
1.98μSV/hと高い数値でした!こういうところに放射性物質がたまるんですね。
(ここは数カ月後に工事によってきれいになりました。)
我が家の周辺(0.2-0.3μSV/h)の数値に比べるとこの数字はかなり高いように思われるかもしれませんが、福島県の中通り地方(東北新幹線が走っている地域の周辺)ではこれがふつうの線量値なのです。(2011年夏時点)
地域の除染活動に参加してみて、地域全体の放射線量を大きく下げることは難しい・・・と痛感させられました。
セシウム、ヨウ素といった放射性物質の除染マニュアル集
<関連サイト>
・ いわき市放射線量低減のためのマニュアルについて(いわき市)
・ 福島県における除染の取り組みについて(福島県HP)(PDF)
福島第一原子力発電所の爆発事故により拡散した放射性物質の除染作業の手順は、各地の自治体のホームページに除染マニュアルとして紹介されています。除染作業の際に舞い上がる放射性物質を含むホコリの吸引を防ぐためにマスクを着用し、さらに帽子、ゴーグル(メガネ)、手袋、長靴を着用します。高圧洗浄機を用いる場合はしぶきが飛び散るので、雨合羽(カッパ)を着た方が好ましいです。作業内容は、草刈り、洗浄(水洗、ふき取り)、清掃、表土剥ぎ、剪定(刈込み)、草刈り、土砂のかき取り、落ち葉集め、屋根や雨樋の洗浄、高圧洗浄機による洗浄などです。活動は除染アドバイザーの資格を持つ方の指示に従い、個人、地域単位での活動、ボランティアとの協力による活動があります。集めた落ち葉、草木、土砂は自治体の指示に従って保管および処分します。土壌は土のう袋に入れてビニール袋やブルーシートをかけた状態で公園や広場などの仮置き場に集めた後、最終処分場が決まるまで保管します。重機により地面に穴を掘って遮水シートで覆った場所に埋めることもあります。市役所や役場、公共施設、通学路が優先的に除染の対象となります。